前回の『障害者への合理的配慮』は聴覚障害(言語障害)でした。
2回目の今回は視覚障害についてです。
1回目の聴覚障害についてはこちらを見てください。
→ 障害者への合理的配慮①聴覚障害(言語障害)
この『合理的配慮』は、2016年4月に『障害者差別解消法』が施行された時から耳にするようになりました。
当初は行政機関のみ義務で、民間の事業者は努力義務でしたが、2021年の改正により2024年4月からは民間の事業者も障害者への合理的配慮が義務となりました。
前回説明した通り、義務と言われても何をしたら良いか分からないという人が大半だと思います。
そこで、障害ごとに何をすれば良いのか私自身も学ぼうと思い、前回から内閣府がまとめた合理的配慮の事例集に目を通しています。
この内閣府の事例集は117頁あって、「合理的配慮」「環境の整備」「合理的配慮+環境の整備」の3パターンに分けて各障害への配慮の事例を掲載しています。
配慮の方法はこれだけではないし、障害者の状態は皆バラバラで求めていることもイコールではないので、これを読めばすべてが分かるわけではありませんが、どんな配慮ができるかを考える上での最初の一歩としてヒントになると思うので、各障害に分けてまとめることにしました。
今回は『視覚障害』のところだけ抜粋してまとめます。
事例を読んでいると、そういう不便もあるのかあと気付かされることも多々あり、勉強になります。
全部を一度に読みたい方は、内閣府のHPを参考にしてください。
事例についての内閣府のURLも記載しておきます。
↓
【合理的配慮事例集(内閣府)】
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/jirei/example.html
※上記URLの下段にPDF形式とTXT形式のボタンがあります。
■事例を読む前に(障害の状態は人によって様々)
これはどの障害でも言えることなのですが、障害の状態は人によって異なります。
視覚障害と聞くと見えない人が浮かびますが、完全に見えない人は少なく、見えにくい人が大半です。
たまにSNSの投稿などで、白杖を持っている人がスマホを見ていたと非難しているのを見かけることがあります。
手元は見えても足元が見えない人もいることなどが想像できないからの非難です。
視覚障害も様々です。
小さな穴をのぞく程度の視野しかない人もいれば、眼鏡をかけても視力が出ず手元しか見えない人もいます。
夜盲症(鳥目)の人は暗さに目が慣れないので、暗い所では物が見えません。
色覚障害(色盲)の人は色の識別ができなくて困っています。
目の困り事もいろいろです。
近年は近視の人が増えており、健康な目を維持している人は少なくなってきました。
40代からは老眼に悩む人も出始めます。
だけど眼鏡でカバーできるのは障害ではありません。
私も目のトラブルを抱えていますが視覚障害ではありません。
だけど、聴覚で健常者と障害者の両方の経験を持つ私は、障害は当事者にしか分からないことが沢山あるということは知っています。
なので、私がここで明言できるのは、自分を基準に障害の状態や困りごとを決めつけてはいけないということです。
これについては少し具体的に話したいので、自分のことを話します。
私の子供の時の視力は両目とも1.5でした。
中学生の時に片目の視力が0.4まで落ちて、左右の視力差が大きく開いたため遠近が取りにくくなりましたが 片目がよく見えていたので眼鏡をかけることなく過ごしていました。
30歳になると視力の良い方の目が白内障になり、もう片方は近視だったので眼鏡無しでの生活が困難になり眼鏡をかけるようになりました。
白内障の目は眼鏡をかけても視力が出ないので、今度は近視の目に頼って生活することになりました。
私は手術が恐かったので、白内障の手術を決意した時には 視界はすでに真っ白。
これ以上はまずいギリギリまで放置していたので、一時期は完全に片目で暮らしていました。
その後、白内障の目は手術することで視力を取り戻しましたが、数か月後には後発白内障を発症し再び見えなくなりました。これもレーザー治療で見えるようになったものの、また視界がぼやけてきています。
そんな目なので、見えない不便さは多少は知っています。
でも、眼鏡をかければ日常生活に大きな支障はありません。
世の中には、私程度の不便を抱えている人はいっぱいいると思います。
こういう不便を抱えていると、障害者の見えにくさを 自分の見えにくさを基に想像してしまいがちですが、そういう想像の仕方は障害への配慮に欠けてしまうリスクを高めてしまいます。
なぜなら私達は目が見えない不便は想像できても、実生活の不便を知らないからです。
例えば、近視の酷い人は眼鏡を外すと殆ど見えません。
私の今の裸眼視力は0.04以下です。
人工レンズの目も、もう片方の目に合わせたので0.04ほどしかなく、生の目は手術当時よりも更に視力が落ちているので今は0.04もありません。
当然、眼鏡がないと目の前の人の顔はぼんやりだし、足元も見えないから見知らぬ場所を眼鏡無しで歩く気にはなれません。だけど、ぼんやりした視界でも映像記憶がある場所は行動できます。
眼鏡をかけるたびに映像記憶を更新しているので不安もあまりありません。
視覚障害者は、この映像記憶に頼ることができません。
想像してみてください。
眼鏡をかけている時に あの本はあそこに並んでいると確認していたら、眼鏡を外してもその近くまで行って本を探せます。
視覚障害者は、眼鏡をかけても充分な視力が出ないので、そもそも本があそこにあるという情報が入ってきません。
殆ど見えない人は、聴覚、嗅覚、触覚といった別の機能を総動員して行動します。
眼鏡をかければ視覚で確認できる人には想像できない労力です。
なまじっか見えない状態を知っている人は、その時の見えない状態だけを想像しがちになるので要注意です。
視覚障害者は 私達には想像できないような不便を味わっているということを忘れず、自分の想像や知識を勝手に押し付けてしまわないように気を付けねばなりません。
・・・・・・・・・・・・・・・
少しだけ、内閣府の事例を読んだ感想を書きます。
私は聴覚障害者なので聴覚障害の配慮の事例は読むだけで、どんな状態の障害者にどのように配慮をしているかの場面をリアルに思い浮かべることができましたが、今回の視覚障害は聴覚ほどリアルには浮かびませんでした。
普段、視覚障害者と接する機会がないため、視覚障害者がどのような機材を使い、どのように生活しているのか、知らないことが多過ぎることを痛感しました。
更に、こういう不便もあったのかと、今まで気付いていなかったことに気付かされた部分もあり、配慮するためには予め知識を持っておくことは大事だと思いました。
事例はあくまで対応例なので、統計的な情報までは書いていません。
例えば、対応例の中にある『点字』。
視覚障害者は点字を読めると思っている人が多いですが、点字を読める視覚障害者は1割程度なので、点字があれば分かるだろうと安易に考えると多くの視覚障害者は困ったことになります。
それに、点字が読めても、点字の表記場所が分からなければ役に立ちません。
見える私達は、意識することなく最初に目で確認します。
どこかなあと目を向ければ自然に情報が入ってきます。
あまりに自然なことなので、この最初の確認が視覚障害者には難しいということが抜け落ちてしまいがちです。
例えば、分からない事があったり、困った時には、私達は店員さんや施設の人に声をかけますが、見えない人は店員さんを探すことができません。頼める人がそばにいるのかも分からなければ、どこに相談窓口があるのかも見えません。
“見えなくて困った時、見えなくても助けを求められる体制になっているか?”ということが一番大切なことのように思います。
そのためにも、私達は様々な事例に目を通して自分なりに考えてみることが大事だと思いました。
ちなみに視覚障害者も各人の状態によってフォローして欲しいことは違います。
配慮の仕方に迷ったなら、まずは相手に訊くのが一番良いと思います。
そして、声掛けは視覚障害者の配慮の基本でもあります。
突然、引っ張られたり、黙って誘導されると怖いという話はよく聞きます。
視覚障害者には常に声をかけ、目の前に何があるかなど説明しながら誘導することを心掛けたいと思います。
いざという時に戸惑わないために、皆さんも、ぜひ事例に目を通しながら いろいろ考えてみてください。
ここから下は内閣府の『視覚障害』の事例です。
文章が分かりづらいと思った部分は、少し書き換えています。
事例集では『合理的配慮の提供事例』『環境の整備事例』『合理的配慮の提供+環境の整備事例』の3つに分かれていましたので、ここでも同様に分けて掲載します。
■合理的配慮の事例【視覚障害】
(出典:内閣府「障害者差別解消法【合理的配慮の提供等事例集】」)
※文面は多少変えたところがあります。
※青文字は私個人が疑問に思ったことや補足説明です。
【Ⅰ. 生活場面例:行政】
事例Ⅰ-①
役所に申請手続に来たが、慣れない場所なので、どこで受付すればよいのか分からない。
(対応例)驚かせることのないように、正面から「私は○○ですが、何かお手伝いしましょうか?」と声をかけて受付窓口まで案内した。
事例Ⅰ-②
研修会に参加したいが、会場での移動や研修会資料が読めるか不安である。
(対応例)移動しやすいよう出入口に近い席を受付窓口から介添えして席まで案内したり、研修資料をPDFやテキストデータにデジタル化して事前に送付した。
事例Ⅰ-③
書類等にマーカーで線を引いて説明をされても、色が同じに見えてしまうので分からない。
(対応例)該当箇所に数字や下線、波線等の印をつけて説明をした。
事例Ⅰ-④
図書館を利用するときに、蔵書の検索機を操作できず、書架のレイアウトも分からない。
(対応例)要望に沿って職員が検索機を操作したり、本を代わりに取ってくるなどの配慮を行った。
事例Ⅰ-⑤
図書館で借りた本を点字化して読みたいので、作業のために貸出期間を延長してほしい。
(対応例)その本の貸出頻度を考慮しつつ、通常よりも延長した期間の貸出しを行った。
事例Ⅰ-⑥
図書館の見学ツアーに視覚障害者複数名で参加したい。
(対応例)説明者や誘導者による配慮がしやすいよう、視覚障害者の参加者の見学グループを少人数に調整した。
事例Ⅰ-⑦
博物館施設の見学イベントがあるので参加したい。直接触れることのできる展示物があるとありがたい。
(対応例)展示物に触れることは禁止されているが、差し支えないと思われるものについては触れてもよいこととした。
事例Ⅰ-⑧
視覚障害があるが、博物館で資料を閲覧、印刷したい。
(対応例)デジタル資料を紙に拡大印刷する方法や、印刷資料をPDFやテキストデータにデジタル化して提供するサービスを案内した。
事例Ⅰ-⑨
警察官が巡回連絡に来ると、本当に警察官なのか確認できなくて不安になる。
(対応例)初回は点字を付したCR名刺(※Community Relations 名刺:巡回連絡などで配布している)を渡し、その後は同じ警察官が訪問するようにした。
【Ⅱ. 生活場面例:サービス(小売店、飲食店など)】
事例Ⅱ-①
最初に整理券を取り、受付の順番になると整理番号がモニターに表示される仕組みであったが、表示されても気付くことができない。
(対応例)受付の担当者が整理番号を把握しておき、順番になったときには声かけを行った。
事例Ⅱ-②
列に並んで順番待ちをする場合には、並ぶべき列の終端や徐々に進んでいくタイミングが分からない。
(対応例)店員が順番について把握しておき、順番になるまで 列とは別のところで待機できるようにした。
事例Ⅱ-③
盲導犬を連れたお客が来店したところ、他のお客から犬アレルギーだという申出があった。
(対応例)双方に御了解いただいた上で、お互いが離れた位置になるよう配席を変更した。
事例Ⅱ-④
盲導犬と温泉施設へ来たが、入浴している間に盲導犬を待機させる場所はあるかと訊かれた。
(対応例)浴室や脱衣所に盲導犬の待機場所はないので、入浴している間は事務室で預かることにした。
事例Ⅱ-⑤
買いたい商品があるのだが、陳列棚のどこに置いてあるのか、また価格がいくらなのかが分からない。
(対応例)商品が置いてあるところまで案内し、価格や機能などの表示情報を読み上げてお伝えした。
事例Ⅱ-⑥
弱視のため商品をタブレットで撮影・拡大して確認したいのだが、店内での撮影が禁止されている。
(対応例)情報保障のため、撮影を認めることにした。
事例Ⅱ-⑦
自分の好みに合う衣料品を購入したい。
(対応例)衣料品の形状や色について口頭で説明し、布地に触れて肌触りを確かめていただいた。
事例Ⅱ-⑧
銀行のATMや食堂の券売機などを使用したいときに、タッチパネル式になっていると操作できない。
(対応例)(ATMについては暗証番号を聞くことについて御了解いただいた上で)店員がATMや券売機などのタッチパネル操作を代行した。
事例Ⅱ-⑨
トイレの場所を聞いたときに入口まで案内してくれたのだが、複数の便器があるトイレだったので中で困ってしまった。
(対応例)同性の店員がいる場合には、トイレの中まで案内するようにした。
※トイレなどの問題は普段どうしているのだろう?と思う。最初に位置を教えてもらって、それを記憶して、次回からはできるだけ自分で行動するという話は聞いた事があるが、これも時と場合によって違うのだろうなあ。
事例Ⅱ-⑩
駐車場から店舗までの通路にある点字ブロックの上に、他の客の自転車が置かれており立ち往生してしまった。
(対応例)店舗まで店員が案内するとともに、点字ブロック上の自転車は駐輪場へ移動させた。
※点字ブロック上の障害物による立ち往生の話はよく耳にする。そもそも点字ブロック上に物を置かせない対策がなければこの問題は解決しない。これについては環境の整備も併せて検討する必要がある。
事例Ⅱ-⑪
定食など複数の食器に分かれて盛り付けられている料理では、どこに何があるのか分かりにくい。
(対応例)店員が配膳するときに、食器の位置や料理内容について説明する配慮を行った。
事例Ⅱ-⑫
食堂における食事の受け取りなど、一人で食堂を利用することが難しい。
(対応例)食堂スタッフが誘導や食事の受け取りサポートを行った。
事例Ⅱ-⑬
インターネットの通信販売で商品を注文したところ、PDF形式の確認書類が電子メールで送付されてきたが、その記載内容が画像として情報認識されており、読み上げソフトを使用することができない。
(対応例)印刷した確認書類をスキャナーで読み込んでPDF形式に変換していたが、それだと読み上げソフトが使えないとのことだったので、テキスト情報が残るように、パソコン上で形式変換したものを送付した。
【Ⅲ. 生活場面例:教育】
事例Ⅲ-①
入学当初は特に、教室、階段、トイレの位置などが分からず、学校内の移動が不安になる。
(対応例)入学の際に学校内の歩行指導を行った。
事例Ⅲ-②
後で復習するときに使いたいので、授業を録音させてほしい。
(対応例)授業の録音は禁止されているが、障害の状況等を踏まえ、録音機器の使用を認めることとした。
事例Ⅲ-③
黒板に書かれている重要な箇所について、赤色のチョークで強調されると、色覚障害があるため分からなくなってしまう。
(対応例)強調したい箇所があるときは、他の見やすい色のチョークを用いたり、カラーチョークではなく波線によって強調したりするなど、黒板の書き方を工夫した。
事例Ⅲ-④
通常のテストの問題用紙では印刷された文字が小さくて、弱視のため読むことができない。
(対応例)当該児童生徒の見やすいフォントを確認し、ポイントを上げてテストの問題用紙を作成した。また、弱視レンズや拡大読書器などの視覚補助具を使用できることとした。
事例Ⅲ-⑤
授業で使用する資料や授業中の黒板などの文字が小さくて、弱視のため読むことが難しい。
(対応例)授業で使用する資料のデータを提供して自身のタブレットPCで拡大できるようにした。また、授業中に黒板や紙媒体の資料を拡大するため弱視レンズなどの視覚補助具の活用やタブレット型端末で写真撮影を許可した。
事例Ⅲ-⑥
拡大文字を使う配慮の提供を受けているが、教材が大きくなり机からはみ出してしまう。
(対応例)座席配置を変更して、当該生徒等が2つの机を使えるようにした。
事例Ⅲ-⑦
視機能の低下があり、テストの問題文の読み取りに時間がかかる。
(対応例)定期考査等の時間延長や問題文の拡大を実施した。
【Ⅳ. 生活場面例:医療・福祉】
事例Ⅳ-①
処方された2種類の点眼薬が同形状の容器のため、区別ができない。
(対応例)調剤する際に一方の点眼薬にテープを貼り、感触だけで判別がつくようにした。
【Ⅴ. 生活場面例:交通・移動】
事例Ⅴ-①
乗車券をクレジットカードで購入しようとすると署名を求められるが、視覚障害があり文字を書くことができない。
(対応例)本人に承諾の上、署名の代筆についてクレジットカードの関係機関に確認するとともに、複数の職員で対応した。
【Ⅵ. 生活場面例:災害等】
事例Ⅵ-①
避難所のレイアウトに慣れておらず、一人ではトイレに行くことが難しい。
(対応例)避難所のスタッフがいない間もトイレに行けるように、トイレまでの動線が分かりやすい場所を割当スペースとした。
事例Ⅵ-②
弱視により障害者向けの配慮を受けていたところ、他の被災者から「見えているのに不公平ではないか」と非難されてしまった。
(対応例)本人の希望を踏まえて、弱視も視覚障害であることについて、周囲の理解を得られるように説明を行った。
※この第三者による説明はほんとに助かる。特に見た目では分からない障害の場合、本人の説明では納得しない人も多いので、きちんと説明してもらえることは視覚障害に限らず有りがたい。但し、中には障害のことを言って欲しくない人もいるので、対応例の文面にもあるように本人の希望は聞くようにしてください。
■環境の整備事例【視覚障害】
(出典:内閣府「障害者差別解消法【合理的配慮の提供等事例集】」)
※文面は多少変えたところがあります。
※青文字は私個人が疑問に思ったことや補足説明です。
【Ⅰ. 生活場面例:行政】
事例Ⅰ-①
庁舎の玄関ホールにおいて、動線を分かりやすく整備した例。
(事例)玄関ホール内に出入口付近から通路方向へ誘導する点字ブロックを設置した。
事例Ⅰ-②
階段の段差が分かりやすくなるよう整備した例。
(事例)階段の縁に目立つ色の滑り止めを設置し、弱視でも段差を認識しやすいようにした。
※片目で見えにくかった時、階段の縁がグレーから、くっきりした色に変わったことがあり、段差の陰影との区別がしにくくなって恐い思いをしたことがあります。目立てば良いというものではなく、陰影との区別がつきにくくなると危ないので、その点も配慮してください。モノクロ柄の床や階段は、たぶん多くの視覚障害者は苦手だと思います。
事例Ⅰ-③
視覚障害者にとって必要なコミュニケーション手段である代筆・代読ができるようにした例。
(事例)本人の希望を踏まえて、職員が代読・代筆をするようにした。特に代筆の場合には、複数の職員で確認するようにした。
事例Ⅰ-④
図書館を利用する視覚障害者が、職員の支援を受けやすくするために機器を導入した例。
(事例)誘導用電子チャイムを設置し、利用者の来館が伝わり、職員の支援を受けやすくした。
事例Ⅰ-⑤
給付金の申請漏れを防止するため、視覚障害者向けの案内を工夫した例。
(事例)視覚障害者への案内には、点字を常用している場合があることから、役所からの封書に点字の案内も合わせて送付し、一定期間経過しても請求がない人に対しては再度、電話等で直接お知らせした。
事例Ⅰ-⑥
視覚障害者が駐車場でつまずかないよう改善した例。
(事例)駐車場への誤侵入を防ぐため、点字ブロックやガードを付けるなど必要な箇所を確認し設置するとともに、車止めを1列撤去した。
事例Ⅰ-⑦
視覚障害のある人に選挙公報を分かりやすく伝えられるよう工夫した例。
(事例)音声CD版を作成したり、ホームページにそのリンクを貼ったりするなど情報保障を拡充し周知した。
事例Ⅰ-⑧
視覚障害のある人に自治体だよりを分かりやすく伝えられるよう工夫した例。
(事例)点字版、テープ版、デイジー版(デイジー(DAISY)は、「Digital Accessible Information System(アクセシブルな情報システム)」の略でデジタル録音図書の国際標準規格。単に音声を録音するだけではなく、目次から読みたい章や節、注釈など任意のページや場所に飛ぶ機能が備わっている。)の自治体だよりを発行した。
【Ⅱ. 生活場面例:サービス(小売店、飲食店など)】
事例Ⅱ-①
受付で入力が必要なモニターを見られない人向けに機器を導入した例。
(事例)ハンドセット付きの受付機器を導入した。
事例Ⅱ-②
ATMを使用する際、カードを分かりやすく挿入できるよう工夫した例。
(事例)手触りでカードの前後と表裏が識別できるように、カードデザインに凹凸を追加し、挿し込む方向を分かりやすくした。
事例Ⅱ-③
窓口に行かなくても預金残高を確認できるよう工夫した例。
(事例)視覚障害者対応ATMのハンドセット使用時に、残高の音声出力がされるよう、システム改修を行った。
事例Ⅱ-④
文字や点字を読むことが困難な方に受付先を案内する際の表示を工夫した例。
(事例)受付センターの連絡先を読み上げる音声コードを使用することとし、音声コードをリーフレット等へ印字するようにした。
事例Ⅱ-⑤
飲食店で視覚障害のある人に注文内容を分かりやすく伝える例。
(事例)点字のメニューを用意した。
事例Ⅱ-⑥
「補助犬は入店不可」といった対応がなされることのないよう、事前に店員に研修を行った例。
(事例)店員の中に、補助犬とペットの違いを理解していない者がいることにより補助犬の入店を断ってしまうことのないよう、店員の研修に補助犬に関する事項を追加した。
事例Ⅱ-⑦
契約書類について同行者又は店舗スタッフが代筆できるようにした例。
(事例)重要な書類のため代筆に躊躇してしまうという意見が店舗スタッフからあったので、同行者が代筆する場合と店舗スタッフが代筆する場合のそれぞれについて、どのように対応するのかを具体的にマニュアルで定め、研修を実施した。
事例Ⅱ-⑧
視覚障害者が代筆を希望する場合に円滑に対応できるよう工夫した例。
(事例)内規を見直し、代筆による記入が可能とする条件を緩和した。
事例Ⅱ-⑨
弱視の方などが文字を読みやすいように工夫した例。
(事例)商品パンフレットは、ユニバーサルデザインフォントを使って作成した。
事例Ⅱ-⑩
視覚障害者が点字ブロックを確認しながら円滑に移動できるよう通路の状況を見直した例。
(事例)点字ブロックと商品の間が十分に空くようにしたり、陳列位置に柵を設置したりするなど、店舗レイアウトを変更した。
事例Ⅱ-⑪
視覚障害者が商店街の通路を通行しやすいように改善した例。
(事例)視覚障害者団体の方と一緒に商店街を回って意見を聴き、聴取結果を踏まえ通路沿いにあるイートインスペースや鉢植えのレイアウトを見直すなどの取組を行った。
事例Ⅱ-⑫
リニューアルに伴い、視覚障害者にとって使いづらくなっているホームページの仕様を改善した例。
(事例)視覚障害者の意見を聞きながら、視覚的な演出と視覚障害者にとっての使いやすさが両立するホームページに再構成した。
【Ⅲ. 生活場面例:教育】
事例Ⅲ-①
視覚障害者が使用できる教材を提供できるよう整備した例。
(事例)試験の過去問などを電子テキスト化、PDF化し、パソコンの読み上げ機能で使ったり、タブレット端末等で拡大したりすることができる問題集を作成した。
学校に点字プリンターを導入した。
事例Ⅲ-②
校内の移動に際した対応として、教室を分かりやすく表示する例。
(事例)教室の用途が分かるように、各教室のドアに点字ラベルで教室名や教室番号を表記するようにした。
事例Ⅲ-③
夜間でも構内や建物内を安全に移動できるように施設を整備した例。
(事例)単独で移動することが不便にならないように、センサー式の夜間照明と多目的トイレを新設し、階段に滑り止めを設置した。
【Ⅳ. 生活場面例:交通・移動】
事例Ⅳ-①
バスに乗る前に行き先が確認できるようにした例。
(事例)バスの乗降口にスピーカを設置し、そこからドア開閉時に行き先について放送を流すようにした。
事例Ⅳ-②
通学経路にある歩行者用信号機の横断に係る時間設定が短く、渡り切れないことがあるため改善した例。
(事例)交通状況と信号機周期を検証し、通学時間帯はより長い横断時間を確保できるように時間設定を変更した。
事例Ⅳ-③
信号に視覚障害者用の音響装置が複数設置されているが、区別しづらいことから改善した例。
(事例)設置されている装置が全て女性の音声となっており聞き分けができなかったことから、東西と南北の装置をそれぞれ男女の音声に分けて改修した。
事例Ⅳ-④
破損や凸凹が生じている歩道の点字ブロックを整備した例。
(事例)道路保全を担当している機関において視覚障害者団体などからヒアリングを行い、得られた意見等を反映させて点字ブロックの整備を行った。
※点字ブロックの破損や、工事により途中で途切れた状態を何年も放置している所を見かけることが多い。見えている人は破損や途切れに気付けるが、見えない人は破損した場所や途切れた場所に誘導されて立ち往生することになる。ヒアリングも重要だが、それ以前に破損箇所は至急チェックして補修を進めるべきだと思う。
事例Ⅳ-⑤
道路工事の箇所を安全に歩行できるように整備した例。
(事例)日中は交通誘導員を配置し、夜間はゴムマット状の誘導ブロックを敷設した。
事例Ⅳ-⑥
駅のホームや通路の白線表示を改善した例。
(事例)白線表示が薄く、弱視の方が識別しづらくなっていたことから、白線表示を引き直すとともに、一部は点字ブロックに改修した。
事例Ⅳ-⑦
視覚障害者が使用するタンデム自転車(複数のサドルとペダルがあり複数人で乗車可能な自転車)が公道で使用できるよう規則改正を行った例。
(事例)交通規則でタンデム自転車での公道走行が禁止されていたが、可能となるように交通規則を改めた。
事例Ⅳ-⑧
大学まで安全に通行できるよう道路を整備した例。
(事例)道路管理者が大学前の横断歩道口の視覚障害者誘導用ブロックの更新及び大学入口までの視覚障害者誘導用ブロックを延伸した。
【Ⅴ. 生活場面例:災害等】
事例Ⅴ-①
避難所で情報収集に必要なラジオを使用しやすくする例。
(事例)自治体でラジオと合わせてイヤフォンも備蓄した。
【Ⅵ. 生活場面例:新型コロナウイルス感染症対応】
事例Ⅵ-①
新型コロナウイルス感染症予防のため児童施設が閉鎖されている期間中でも、視覚障害のある子供が学習支援を受けられるよう工夫した例。
(事例)オンラインで音声教材の配布等を実施した。
■合理的配慮及び環境の整備の提供事例【視覚障害】
(出典:内閣府「障害者差別解消法【合理的配慮の提供等事例集】」)
※文面は多少変えたところがあります。
【Ⅰ. 生活場面例:行政】
事例Ⅰ-①
市役所福祉課関係の部署から郵送する文書には、封筒の表面に中身のことを点字で書いてもらいたいという要望があった。
(対応)
直ちに全ての封筒に点字の印字を行うことは難しいため、代わりに丸シールを貼ることを申出者に提案し、了承を得た。(合理的配慮)
その後は、希望者に対して、福祉課からの郵送物の目印として封筒に丸シールを貼る仕組みとした。(環境の整備)
【Ⅱ. 生活場面例:新型コロナウイルス感染症対応】
事例Ⅱ-①
郵送のみの申請とされている特別定額給付金の申請について窓口対応してもらえないかという要望。
(対応)
一般的な受付方法としては窓口対応を想定していなかったが、窓口で対応した。(合理的配慮)
また、今後は視覚障害者に限らず、申請手続が困難な障害者に対し、窓口における申請サポートの機会を設けた。(環境の整備)
内閣府の事例は以上です。
見えないと、いろいろ危険も多いし、不便です。
困っていそうなことに気付いたら、あなたが事業者でなくても積極的に声をかけましょう。
お店の人を呼びに行くぐらいはすぐできます。
困った時は お互い様。
皆で助け合える世の中になるのが理想です。