『障害者の合理的配慮』の4回目は『肢体不自由』です。
肢体不自由とは、病気や怪我などで、上肢・下肢・体幹の機能の一部、または全部に障害があり、「立つ」「座る」「歩く」「着替える」「食事をする」「物の持ち運び」「字を書く」など、日常生活の基本動作が困難になった状態です。
一般に浮かぶのは車椅子。
段差のある場所や狭い所は移動できないし、立ち上がれないので高い所にある物を自力で取るのも困難です。
そういった見える不便は比較的想像しやすいですが、中には体温調節機能を失っている人もいて、冷房の風が当たる場所が地獄になる人もいます。
障害で抱える問題は一人一人違うので、せっかくの配慮が却って相手を困らすこともありますから、配慮する時は一方的にではなく 本人に確認するようにしてください。
法的には2024年4月から民間事業者も「障害者への合理的配慮」が義務になりました。
合理的配慮の言葉は『障害者差別解消法』が施行された2016年4月から耳にするようになりましたが 法が改正されるまで義務だったのは行政機関のみで、民間事業者は努力義務だったこともあって、今でも合理的配慮を知らない人が多いです。
だけど、誰でも働いていれば配慮する側になるので、知らないでは済まされません。
とはいえ、初めて出会う障害者に突然配慮をと言われても戸惑ってしまいます。
私も自分の障害(聴覚)以外のことは知らないことだらけ。
なので、障害ごとに何をすれば良いのか私自身も学ぶために、内閣府がまとめた合理的配慮の事例集に目を通しています。
この内閣府の事例集は117頁あって、「合理的配慮」「環境の整備」「合理的配慮+環境の整備」の3パターンに分けて各障害への配慮の事例を掲載しています。
配慮の方法はこれだけではないし、障害の状態は皆バラバラで求めていることもイコールではないので、これを読めばすべて分かるというものではありませんが、どんな配慮ができるかを考える上での最初の一歩としてヒントになると思います。
ちなみに合理的配慮は義務ですが、環境の整備は努力義務です。
4回目の今回は『肢体不自由』を抜粋してまとめました。
他の障害についてもまとめているので参考にしてください。
障害者への合理的配慮
*1回目:聴覚障害(言語障害)
*2回目:視覚障害
*3回目:盲ろう
※今後も原稿を作成するたびに追加していきます。
これを読んでいる人の中には、全部の障害のことを一度に読みたいと思っている人もいるかもしれませんので、参考に内閣府の事例の頁のURLを記載しておきます。
↓
【合理的配慮事例集(内閣府)】
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/jirei/example.html
※上記URLの頁の下段にPDF形式とTXT形式のボタンがあります。
■合理的配慮の提供事例【肢体不自由】
(出典:内閣府 「障害者差別解消法【合理的配慮の提供等事例集】」)
※文面は多少変えています。
※青文字は私個人の意見です。
【Ⅰ. 生活場面例:行政】
事例Ⅰ-(1)
車椅子を使用しているが、庁舎の玄関に大きな段差があって通れないので、携帯スロープを架けてほしい。
(対応)庁舎では携帯スロープを準備しておらず、また重量のある大きな車椅子のため職員が持ち上げて段差を乗り越えることもできなかったが、通常は職員専用である段差が小さい通用口へ案内することで、庁舎に入っていただくことができた。
事例Ⅰ-(2)
申請書類の受付窓口が庁舎の2階にあるのだが、エレベーターがないため上がることができない。
(対応)使用していない会議室など1階の適宜の場所まで担当職員が移動し、臨時に受付を実施することで対応した。
事例Ⅰ-(3)
申請書類に記入したいのだが、設置されている記帳台が高すぎて使うことができない。
(対応)記帳台に代わるものとして、バインダーをお貸しした。
事例Ⅰ-(4)
手続の受付時間が指定されていたが、朝一の時間になっており、通勤で混雑する時間帯と重なってしまい移動の負担が大きい。
(対応)混雑する時間帯を避けて移動できるように、受付時間の調整を行った。
事例Ⅰ-(5)
頸髄損傷により体温調節機能が損なわれているが、出席する会議の部屋の冷房が不調で、室温が高い状態になっている。
(対応)会議の部屋に扇風機や氷枕型保冷剤を用意した。
事例Ⅰ-(6)
役所の説明会に参加するときに出入りしやすいように後方の席を用意してほしい。
(対応)出入りと移動のしやすさを考慮して後方に席を用意した。
事例Ⅰ-(7)
図書館を利用するときに、蔵書の検索機を操作できないので、どこに本があるのか探しづらい。
(対応)要望に沿って職員が検索機を操作したり、手が届かない位置にある場合は代わりに取ってくるなどして、読みたい本を探せるようにした。
事例Ⅰ-(8)
平らなところは歩けるが、段差や傾斜があると負担が大きい。フォーラム会場は自由席とのことだが、何らかの配慮をしてほしい。目立つような配慮をされると恐縮してしまうので、できるだけ自然な配慮をお願いしたい。
(対応)会場内の段差がない区域に「関係者席」として座席を確保しておき、そちらへ案内した。
事例Ⅰ-(9)
歴史的建造物の見学イベントに参加したいが段差が多い。車椅子で移動可能な範囲だけでも見学させてほしい。
(対応)当日のスタッフの一部を案内役へ変更し、車椅子でも移動可能な順路で別途案内した。
事例Ⅰ-(10)
県が主催するイベントに参加したいが、会場周辺のトイレや移動のための段差を解消してほしい。
(対応)車椅子用トイレを整備している会場周辺の店舗等においてイベント開催時にはトイレを借りられるようにした。また、段差のある場所に携帯スロープを架けた。
事例Ⅰ-(11)
行政が契約している地下駐車場が改修工事のため、福祉車両が駐車できなかった。
(対応)行政の担当者が工事業者と交渉し、資材等が置いてあるビル1階の共有スペースを空けてもらい、福祉車両が駐車できるスペースを確保した。
【Ⅱ. 生活場面例:サービス(小売店、飲食店など)】
事例Ⅱ-(1)
商業施設の2階にある店舗へ行きたいのだが、エレベーターが故障しており上がることができない。
(対応)裏口にある従業員用のエレベーターを使って2階まで上がっていただいた。
事例Ⅱ-(2)
店舗の出入口が押し引きして開けるドアのため、一人で出入りするのが難しい。
(対応)出入口に着いたところで電話をかけてもらい、店員がドアの開閉を行った。
事例Ⅱ-(3)
商業施設で他のお客が多すぎて、通路を通れなかったり、エレベーターに乗れなかったりする。
(対応)目的の売場まで店員が誘導を行った。
※エレベーターに乗れなくて困ったという話は過去に聞いたことがある。商業施設のエレベーターの混み具合を見ていると 困っている人は多いと思う。特に利用客の多い大型商業施設は一般客とは別に従業員用や搬送用のEVを使ってもらうなどの配慮は必要であろう。
事例Ⅱ-(4)
駐輪場に停めてある自転車が数台通路にはみ出ており、電動車椅子では通路を通り抜けることができない。
(対応)電動車椅子が通れるよう、はみ出ている自転車を移動させた。
事例Ⅱ-(5)
飲食店へ行ったときに、まだ空きはあったのだが、車椅子のまま利用できる入口付近のテーブルは、すでに他のお客が使用していた。
(対応)入口付近のテーブルを使用していたお客に御了解いただいた上で、車椅子のお客も利用できるよう配席を変更した。
事例Ⅱ-(6)
飲食店で車椅子のまま着席したい。
(対応)机に備付けの椅子は片付けて、車椅子のまま着席できるスペースを確保した。
事例Ⅱ-(7)
飲食店で車椅子から備付けの椅子に移動して着席したい。
(対応)移るときにふらつくことのないよう椅子を押さえるなど手助けし、車椅子は空きスペースで預かった。
事例Ⅱ-(8)
大型の車椅子を使用しており、また、貧血防止のためフットレストを上げたりリクライニングを倒したりすることがあるので、飲食店での配席時に配慮してほしい。
(対応)飲食店で配席するときに、後方のスペースが広く、テーブルの脚がない位置へ案内した。
事例Ⅱ-(9)
人工呼吸器を使用しており、外出中はバッテリーで駆動しているので、もし可能であれば充電させてほしい。
(対応)飲食店で配席するときに、コンセントに近い場所へ案内し、コンセントを使用していただいても構わない旨をお伝えした。
事例Ⅱ-(10)
半身麻痺はあるが、フォークやスプーンを使って一人で食事をすることができる。しかし、皿を支えることができずに動いてしまい、食べにくいことがある。
(対応)滑りにくい素材のマットがあったので、それを敷いて皿が動かないようにすることができた。
事例Ⅱ-(11)
通常の盛り付けでは食べづらい料理がある。
(対応)料理を食べやすい大きさにカットし、取りやすさに加えて見ばえも考慮しながら盛り付けを行った。
事例Ⅱ-(12)
ホテルに宿泊したときに、大広間へ移動して食事をすることになっていたが、体調不良のため、なるべく移動する機会を少なくしたい。
(対応)バイキング形式であったが、およそ一人前の料理を取り分けて客室まで運び、移動せずに食事できるようにした。
事例Ⅱ-(13)
ホテルに宿泊したときに、バスルームで使えるシャワーチェアーが備えられていなかった。
(対応)「代用できるためパイプ椅子でも構わない」という申出があったので、事務用にあったものをお貸しして、シャワーチェアーの代わりとしていただいた。
事例Ⅱ-(14)
ホテルの大浴場を利用したいが、広いスペースと介助、複数枚のタオルが必要になるので気が引けてしまう。
(対応)事前に相談があったので、当日は通常よりも早く大浴場の準備を整え、本来の開放時間までの間に占有して入浴できるようにした。また、タオルも複数枚を準備しておいた。
事例Ⅱ-(15)
申込書類に自分で記入することができず、同行者もいないので、店員に代筆してほしい。
(対応)十分に本人の意向を確認した上で、店員が代筆による記入を行った。この際、記入内容について後で見解の相違が生じないように、複数の店員が立ち会った。
事例Ⅱ-(16)
自動精算機の順番待ちにおいて、行列が折れ曲がるように配置されていると、車椅子では並べないことがある。
(対応)自動精算機ではなく、有人の窓口で精算を行った。
事例Ⅱ-(17)
障害により指を動かすのが難しく、会計のときに財布から小銭を取り出すのに手間取ってしまう。
(対応)申出があったことから、本人によく確認しつつ、店員が代わりに小銭を取り出して会計を行った。
事例Ⅱ-(18)
購入したい商品があったので車を自分で運転して向かったが、目的の店舗の駐車場が小さくて、車椅子を降ろして店舗内へ入れるスペースがない。
(対応)駐車場から店舗に電話があったので、店員が商品を駐車場まで持って行き、その場で代金をいただいた。
事例Ⅱ-(19)
体温調節機能の障害により、テーマパークなどで炎天下に長時間並ぶことが困難だ。
(対応)スタッフが順番について把握しておき、順番となるまでは室内で待機できるようにした。
事例Ⅱ-(20)
スポーツ観戦のため訪れたスタジアムで、マイコップの持込みが禁止されていた。障害特性で手の震えが強いため、スタジアム内で提供される紙コップでは中身をこぼしてしまう。
(対応)持参のプラスチック製の蓋付き容器を使用を許可。
事例Ⅱ-(21)
セルフ式ガソリンスタンドが増加しているが、障害により自分で給油することができない。
(対応)セルフ式ガソリンスタンドにも給油監視するスタッフはいるため、手が空いているスタッフがいるときには給油を手伝うようにした。
事例Ⅱ-(22)
資格取得のための実技講習において、身体の一部に麻痺があるので配慮してほしい。
(対応)一定の配慮があれば資格取得できる状態であったことから、定期的に受講相談を行い、対応可能な内容については配慮を提供した。
事例Ⅱ-(23)
両替機のタッチパネルに手が届かず入力できない。
(対応)本人の了承を得て、本人に入力内容を確認しながら、担当者が代わりに入力を行った。
事例Ⅱ-(24)
定期預金を解約したいが、入院中で銀行に行けない。また、手が不自由なため自筆ができない。
(対応)銀行の者が病院に行き、本人の意思を確認して家族が代筆し、定期預金解約の処理を完了した。
【Ⅲ. 生活場面例:教育】
事例Ⅲ-(1)
下肢に不自由さがあり歩行に困難がある。また、長距離の移動では、疲れやすいため、学内の教室移動において、配慮してほしい。
(対応)本人と相談のうえ、教室がある建物の玄関付近にフラットなベンチチェアを複数設置し、休憩してから教室へ移動することができるようにした。
事例Ⅲ-(2)
試験中にトイレへ行けるようにしてほしい。トイレは多機能トイレを希望する。
(対応)試験会場を多機能トイレの近くにある部屋にするとともに、座席についても部屋の出入口の近くを割り当てた。
事例Ⅲ-(3)
上肢や手指の動作に不自由さがあり、小さな文字を書くことに困難があるため、学校のテストを受ける際に大きな解答用紙を使えるようにするとともに、時間を延長してほしい。
(対応)解答用紙を拡大し、時間延長も可能とした。
事例Ⅲ-(4)
筋緊張が強く上肢や手指の動作に不自由さがあり、筆記に困難があるため、小テストや期末テストで配慮してほしい。
(対応)本人と相談のうえ、小テストについてはPC上での解答及びUSBメモリによる提出とし、期末試験については授業担当者が選定した代筆者で対応することにした。
事例Ⅲ-(5)
片麻痺(左)があり、実験などを伴う授業の際、器具の操作や細かい作業動作をするときに困難が生じるので支援をしてほしい。
(対応)実験や実習などで困難な動作を伴う場合は、教授の補佐役であるチューターが補助することとした。
事例Ⅲ-(6)
課外授業に参加したいのだが、移動時に乗車予定のバス路線が車椅子に対応していない。
(対応)学校の校用車を随行させ、車椅子を使用している生徒は校用車で移動した。
事例Ⅲ-(7)
下肢装具を着用しているが、皆と修学旅行に参加したい。現地では他の生徒と一緒に行動したい。
(対応)下肢装具を着用していることを前提として、移動ペース、休憩場所、ホテルの部屋割りなどを検討し、できるだけ他の生徒と一緒に行動できるよう計画した。
事例Ⅲ-(8)
子供の運動会を見学したい。車椅子を使用しているのだが、車椅子のまま見学できる場所はあるだろうか。
(対応)保護者が見学する場所は先着順の自由スペースであり、車椅子では移動しにくい位置もあることから、車椅子のまま見学しやすいスペースを別途設け、そちらへ案内した。
事例Ⅲ-(9)公共交通機関での通学は負担が大きい。自分で障害対応車両を運転することができるので、大学へのマイカー通学を認めてほしい。
(対応)学生のマイカー通学は禁止されているが、障害の状況等を踏まえ認めることとした。
事例Ⅲ-(10)
下肢不自由のため車椅子を使用している。大学の教職課程で行う教育実習を受けたいが不安がある。
(対応)事前指導は車椅子での受講が可能な講義室に変更したほか、本実習に向けて実施場所の学校を事前見学し環境の確認や、受け入れ学校へ学生の障害の状況の丁寧な説明を行うなど、学生が円滑に教育実習を実施できるよう配慮した。
事例Ⅲ-(11)
ロッカーの利用について、車椅子に乗った状態で使える高さの場所に指定してほしい。
(対応)使いやすい高さを本人と確認の上、ロッカーの場所を指定した。
事例Ⅲ-(12)
数時間ごとに自己導尿をする必要があることから、多目的トイレに必要物品を置きたい。また、毎回ではないが授業に遅れてしまう可能性もある。
(対応)多目的トイレの優先的な利用や必要な物品を収納する鍵付きボックスを設置するとともに、授業に遅れることがあることを全教員に周知した。
事例Ⅲ-(13)
社会福祉士資格取得のための実習を受けるので、配慮をしてほしい。
(対応)実習先において車椅子置き場や休憩室等を準備し、実習スケジュールも適宜変更する等の対応を行った。
事例Ⅲ-(14)
車椅子を利用しているが車の乗降は一人でできる。自動車教習所に入所したいので、配慮してほしい。
(対応)入所後に、段差のある場所を移動する際の補助や、必要に応じた車椅子に乗車した状態での持ち運びなどの対応を職員が行うこととした。
事例Ⅲ-(15)
自動車教習所で車椅子を利用しているが、学科教習の教室が2階でエレベーターがない。
(対応)できる限り1階で学科教習を実施することとし、2階で受講する場合は職員4人で車椅子ごと運ぶことにした。
【Ⅳ. 生活場面例:医療・福祉】
事例Ⅳ-(1)
肢体不自由のため、病院で支払確認書の代筆をしてほしい。
(対応)窓口及び病院の職員が代筆した。
【Ⅴ. 生活場面例:交通・移動】
事例Ⅴ-(1)
車椅子使用者がタクシーに乗るときはリフト付タクシーを手配することになっているが、台数が少ないので希望時間に沿わないことがある。軽量・折畳式の車椅子の場合は、セダンタイプのタクシーの荷台にも収納することができる。
(対応)セダンタイプのタクシーでも対応できる場合には、そちらも配車するようにした。
事例Ⅴ-(2)
旅客船のタラップが階段状になっているため、車椅子のままでは乗り込むことができない。
(対応)貨物用の搬入口が平らであったことから、本来は貨物用であることを御了解いただいた上で、そちらから乗船していただいた。
事例Ⅴ-(3)
駅で車両とホームの隙間に車椅子の前輪がはまりそうで怖い。ホームの幅が狭い上に点字ブロックがあり、車椅子で方向転換ができない。
(対応)職員が乗降の介助を行った。
※視覚障害者に必要な点字ブロックが車椅子ユーザーの走行の障害になっている話はよく耳にする。点字ブロックとの相性の悪さの解決は今後の大きな課題。
事例Ⅴ-(4)
車椅子で渡船に乗ろうとしたところ、乗船口に段差があり、付添いがいないために乗船できない。
(対応)事業者において簡易スロープで補助することにより段差を解消した。
事例Ⅴ-(5)
歩行が困難で車椅子を利用している。空港の利用を予定しているが、空港まで自家用車を利用し、駐車場へ駐車した後、駐車場から館内のエアラインカウンターまで、車椅子を押してほしい。
(対応)事前に空港の利用予定日時や荷物の個数等を聞き取り、駐車場到着後にインフォメーションへ再度連絡するように依頼した。当日は入電後、空港ターミナルビルスタッフが駐車場へ向かい、エアラインカウンターまで対応した。
事例Ⅴ-(6)
足に障害があるので、搭乗日に空港内のバス降車場から航空会社カウンターまで車椅子の介助を依頼したい。
(対応)手の空いている職員が、バス降車場から航空会社のカウンターまで、車椅子での移動を介助し、案内した。
事例Ⅴ-(7)
車椅子を利用しているが、空港を利用する際にスーツケースなどの荷物が2個以上あり、1人で荷物を運ぶことができない。
(対応)事前の問合せ時に、空港の利用予定日時や氏名、荷物の個数などを聞いた上で、当日は当人が空港内のタクシー乗降場でタクシーから降車後、空港ターミナルビルスタッフがエアラインカウンターまで荷物を運んだ。
【Ⅵ. 生活場面例:新型コロナウイルス感染症対応】
事例Ⅵ-(1)
会計後に袋に商品を入れる際、感染防止のためにレジ袋を自分で開けることとなったが、自分で袋を開けるのが難しいので困っている。
(対応)一律に断るのではなく、可能な範囲で店員が対応した。
事例Ⅵ-(2)
商業施設の入口に、新型コロナウイルス感染予防のため、消毒液が設置されているが、足踏み式のため、車いすでは使用できない。
(対応)来店の際は、スタッフが消毒のお手伝いを行った。
【Ⅶ. 生活場面例:その他】
事例Ⅶ-(1)
法律相談を受けたいが、肢体不自由があるため、法テラスの事務所に来所することが難しい。
(対応)弁護士による出張相談を実施した。
事例Ⅶ-(2)
住んでいるマンションの駐車場は定期的に抽選で場所替えを行っているが、車椅子の乗降に適さない場所がある。
(対応)車椅子を使用している住民向けの駐車場は、一般の抽選枠とは分けることとし、乗降に適切な場所となるよう配慮して別途指定した。
■環境の整備事例【肢体不自由】
(出典:内閣府 「障害者差別解消法【合理的配慮の提供等事例集】」)
※文面は多少変えています。
※青文字は私個人の意見です。
【Ⅰ. 生活場面例:行政】
事例Ⅰ-(1)
庁舎の玄関に設置済みのスロープを使いやすくした例。
(事例)スロープを改修し、より緩やかな傾斜に変更した。
事例Ⅰ-(2)
庁舎のスロープを上がる際に補助が必要な場合に連絡ができるよう設備を整備した例。
(事例)スロープの上がり口にインターホンを設置し、手助けが必要な時は総合案内に繋がるようにした。
事例Ⅰ-(3)
多目的トイレを使いやすくするために改修した例。
(事例)縦・横両方の機能を備えたL字型の手すりに改修し、起立や着座をしやすいようにした。
事例Ⅰ-(4)
来庁者が窓口を利用しやすくできるよう案内等を工夫した例。
(事例)障害のある方が支援を求めやすくするため、総合案内及び受付カウンターに「介助や担当課までの同行が必要な方は、お気軽にお声かけください」という案内表示を掲示した。
※どの障害にも言えることだが、障害者側から配慮を求めるのはとても勇気の要ることなので、こういう掲示はとても有りがたい。
事例Ⅰ-(5)
車椅子の利用者が庁舎内のエレベーターを利用しやすくできるよう工夫した例。
(事例)車椅子利用者が使いやすいエレベーターがある場所の表示を分かりやすくした。
事例Ⅰ-(6)
自治体が主催するラジオ体操に肢体不自由の障害のある方が参加できるように工夫した例。
(事例)椅子に座ったままでできる体操のプログラムを作成し、実施した。
事例Ⅰ-(7)
選挙の投票所内を移動しやすいよう整備した例。
(事例)介助者を配置しスロープを設置した。
事例Ⅰ-(8)
新庁舎の建設に際して障害のある人もない人も同じように利用できる施設にするため工夫した例。
(事例)設計段階から障害当事者や関係団体の意見を取り入れ、ユニバーサルデザインの採用などにより、新庁舎のバリアフリー化を図った。
【Ⅱ. 生活場面例:サービス(小売店、飲食店など)】
事例Ⅱ-(1)
入口に段差がある店舗において、出入りがしやすくなるよう工夫した例。
(事例)出入口を改修してバリアフリー化を図った。
(事例)スロープ設置工事や携帯スロープ購入をすぐには実施できないので、当面の間は頑丈な木の板を購入して対応した。
事例Ⅱ-(2)
車椅子利用者でも利用しやすくなるようドアを整備した例。
(事例)片開き式のドアや重厚なドアでは一人で開閉するときや出入り自体が困難となることから、スライド式のドアに改修した。
(事例)手動ドアを自動ドアに変更した。
事例Ⅱ-(3)
雨の日でも滑りにくいスロープとなるよう整備した例。
(事例)タイル貼りではなく、滑りにくい材質を用いたスロープに改修した。
事例Ⅱ-(4)
店内が通行しやすいよう商品配置等工夫した例。
(事例)電動車椅子が通れるように陳列商品の並べ方を変更した。
事例Ⅱ-(5)
車椅子に座ったまま受付窓口を利用できるように改修した例。
(事例)受付窓口の1つをローカウンターに改修した。
事例Ⅱ-(6)
車椅子を使用する方が一人で来所できるように整備した例。
(事例)出入口等の段差と駐車場の階段をスロープに改良し、介助なしで来所できるよう整備した。
事例Ⅱ-(7)
飲食店のカウンターに車椅子で着席できるように改修した例。
(事例)カウンター席の一部を改装し、入口に近い位置にある席の一部を可動椅子に変更した。
事例Ⅱ-(8)
ホテルを改修する際に多機能トイレも併せて整備した例。
(事例)障害者用トイレに大人用ベッドを設置した。
事例Ⅱ-(9)
車椅子の乗り降りができるよう、駐車スペースを整備した例。
(事例)駐車場の一部(店舗の出入口に近いもの)について、区切りの見直しを行って車椅子の乗り降りにも対応できる駐車場とした。
事例Ⅱ-(10)
社員食堂のメニュー内容を見やすくした例。
(事例)高い棚の上に陳列した小鉢の中身を確認できるよう、面を下方に傾けた鏡を設置した。
【Ⅲ. 生活場面例:その他】
事例Ⅲ-(1)
下半身に障害がある方が運転免許を取得する際に装置等を導入した例。
(事例)手動でアクセルとブレーキも操作できる教習車両を導入した。
(事例)右下肢不自由な方向けに左足用アクセルペダル装置を追加・導入した。
【Ⅳ. 生活場面例:教育】
事例Ⅳ-(1)
医療的ケアが必要な生徒の入学に備え、親の付添いなしに通学できるよう人員配置を行った例。
(事例)常勤の看護師を配置し、親の付き添いがなくとも医療的ケアを提供できる環境を整備した。
事例Ⅳ-(2)
教材や文房具などの毎日の持ち運びが負担になる生徒に配慮した例。
(事例)学校に大きめのロッカーを設置し、そこに学校生活で必要なものを収納しておけるようにした。また、必要があれば教材を2セット渡し、持ち運ばなくとも学校と家で使えるようにした。
事例Ⅳ-(3)
ケガ防止のため教室の床を改修した例。
(事例)ケガなどを未然に防止できるように、床に滑りにくいコルクボードを敷き詰めた。
事例Ⅳ-(4)
肢体不自由のある生徒の入学に備え設備改修を行った例。
(事例)トイレの一部を改修し、多目的トイレを設置した。
(事例)階段の手すりを増設し、各階に車イス車椅子及び段差のある通路にスロープを設置するとともに、階段昇降時に支援する介助員を雇用した。
(事例)教室に専用机を配置し、教室間の移動介助と電動車椅子のバッテリー保管等を行うこととした。
(事例)学生寮が障害者の生活に対応していなかったので、段差解消や手すり設置などのバリアフリー化の改築を行った。
事例Ⅳ-(5)
手が不自由な生徒でもパソコン操作が円滑に行えるよう機器を導入した例。
(事例)タッチパネルで操作できるタブレット端末を導入した。
事例Ⅳ-(6)
移動に困難を伴う生徒に限らず、パソコン室に移動せずともレポート作成等できるよう端末等の機器を導入した例。
(事例)自習やレポートの作成・印刷のために所属学科の教室にパソコンとプリンターを設置した。
※障害の有無に関係なく全体を見直すことで、障害を感じさせない環境に変えて行く。それは最も望ましい解決方法だと思う。
事例Ⅳ-(7)
エレベーターのない校舎で、車椅子の児童生徒が階層移動できるように設備を整備した例。
(事例)階段昇降機を設置するとともに、車椅子で使用できるトイレを整備した。
事例Ⅳ-(8)
車椅子の生徒も含め、生徒等が安全に廊下を歩けるよう校内の廊下を整備した例。
(事例)見通しが悪く生徒等と車椅子の先端がぶつかってしまう廊下の交差箇所にミラーを設置して、お互いの死角ができないようにした。
事例Ⅳ-(9)
積雪時にも一人で移動ができるよう工夫した例。
(事例)教室移動などの動線について検証し、動線に当たる校舎間の除雪を重点的に行うようにした。
事例Ⅳ-(10)
降雨時にも安全に使用できるようスロープを整備した例。
(事例)スロープに水たまりが発生しないように排水溝を整備した。
事例Ⅳ-(11)
排水溝の網状の蓋(グレーチング)に車椅子のタイヤがはまらないよう整備した例。
(事例)蓋を置き換えるのは費用負担が大きいことから、通行量の多い箇所の蓋の上にゴムマットを敷いて防止した。
事例Ⅳ-(12)
スクールバスの巡回ルートについて体調面での負担軽減を図れるように見直した例。
(事例)短い時間での送迎を可能とするため、スクールバスの増車と巡回ルートの見直しを行った。
事例Ⅳ-(13)
遠方の特別支援学校の送迎を親が行うことについて、負担軽減を図れるように対応した例。
(事例)学校と教育委員会で検討し、より近い場所に分校を立ち上げた。
【Ⅴ. 生活場面例:交通・移動】
事例Ⅴ-(1)
駅構内の表示を分かりやすく整備した例。
(事例)バリアフリールートを分かりやすく表示した駅構内図をHP上に掲載した。
事例Ⅴ-(2)
車椅子を利用している乗客に適切な対応ができるよう、バス運転手に対し研修を行った例。
(事例)車椅子の固定方法などの研修について、定期的に全ての運転手を対象として行うこととした。
事例Ⅴ-(3)
駅のホームで介助を受けなくても乗降できるよう整備した例。
(事例)駅員に連絡したり携帯スロープを架けたりしなくとも、いつでも車椅子に乗ったまま自力で乗降できるように、各駅を改修してホームと電車の間がバリアフリーとなる乗降スロープを設置した。
事例Ⅴ-(4)
空港へのアクセスがしやすくなるよう、空港行きのバス路線に車両の導入を行った例。
(事例)車椅子対応のリフト付バスを導入した。
事例Ⅴ-(5)
航空機に搭乗しやすいよう器具を導入した例。
(事例)アシストストレッチャーを導入した。
事例Ⅴ-(6)
車椅子使用者が円滑に利用することができる駐車施設について、車の後方の乗降スペースを確保するための工夫を行った例。
(事例)対象区画に近接する駐車区画を利用禁止とすることにより、車椅子使用者が車の後方から安全に乗降できるスペースを確保した。
事例Ⅴ-(7)
福祉施設への車両での乗り入れがしやすくなるよう、交通規制を見直した例。
(事例)自動車は迂回して福祉施設に入らなければならないことがあったことから、周囲の通行量などを検証した上で、福祉施設の前は一方通行にならないように交通規制を変更した。
【Ⅵ. 生活場面例・災害等】
事例Ⅵ-(1)
災害時の移動に備え器具を導入した例。
(事例)災害時に利用することを想定したエアストレッチャーやヘルメット、休憩用のベッド等を整備した。
事例Ⅵ-(2)
高層階における災害に備え機器を導入した例。
(事例)エレベーターが使えないことを想定し、階段避難車(歩行困難な方を上層階から階段を使用して避難させることができる機器)を備えることとした。
事例Ⅵ-(3)
避難所に避難してきた際の対応を想定して事前準備を行った例。
(事例)仮設トイレとは別に、本人と介助者が余裕を持って入れる広さの部屋を確保して、ポータブルチェアトイレ、簡易便器、ベッドを置き、着替えやトイレができるようにした。
【Ⅶ. 生活場面例:その他】
事例Ⅶ-(1)
海水浴場のシャワー設置場所を整備した例。
(事例)海開きに合わせて、シャワーの設置場所に段差を埋める板を敷き、平坦にすることで、車椅子利用者も利用できるようにした。
■合理的配慮及び環境の整備の提供事例【肢体不自由】
(出典:内閣府 「障害者差別解消法【合理的配慮の提供等事例集】」)
※文面は多少変えています。
【Ⅰ. 生活場面例:行政】
事例Ⅰ-(1)
成人式に出席したいので、会場の様子を教えてほしい。
(対応例)
*成人式の出席予定者に事前送付する案内状に会場の段差などの様子を記載した。(環境の整備)
*当日は職員が申出に応じて個別に席まで誘導した。(合理的配慮)
【Ⅱ. 生活場面例:サービス(小売店、飲食店など)】
事例Ⅱ-(1)
寝た姿勢でないとおむつ交換ができないが、多機能トイレに補助設備がなくて困っている。
(対応例)
*代替として救護室を利用いただいた。(合理的配慮)
*さらに救護室をご利用頂ける旨の案内を設置した。(環境の整備)
【Ⅲ. 生活場面例:教育】
事例Ⅲ-(1)
筋ジストロフィーで筋力が弱く消耗しやすいので、大学で実験作業を行いやすくなるようにしてほしい。
(対応例)
*学生をアルバイトとして雇用し、補助員として人員配置を行った。(環境の整備)
*補助員が障害のある学生による実験作業の指示を受けて実験作業を代替するようにしたことで、当該学生が実験を行うことができるようにした。(合理的配慮)
■最後に
肢体不自由は幅が広いので、事例の量もかなり多く、最後まで目を通すのは大変だったと思います。
障害内容は色々ですが、その中でも車椅子などの場合は環境整備が必要なケースも多く、なかなか小さな店舗などでは対応が厳しい面もありますが、これからはバリアフリーが当たり前になるという意識を持っていれば、次の改装の時や、また新たな開業の時に配慮した計画が浮かびやすくなると思います。
まずは障害者が普段どのような不自由を抱えているのかを知ることから始めてほしいと思います。