障害者への合理的配慮⑤内部障害・難病に起因する障害

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障害者への合理的配慮

2024年4月から民間の事業者も「障害者への合理的配慮」が義務になりました。

合理的配慮の言葉は『障害者差別解消法』が施行された2016年4月から耳にするようになりましたが 法が改正されるまでは行政機関のみが義務だったということもあって、今でも合理的配慮を知らない人が多いです。
だけど、これからは誰でも働いていれば配慮する側になるので知らないでは済まされません。
とはいえ、障害の知識がなければ、配慮と言われても戸惑うだけです。
私も自分の障害(聴覚)以外のことは知らないことだらけ。
なので、障害ごとに何をすれば良いのか私自身も学ぶために、内閣府がまとめた合理的配慮の事例集に目を通しています。

この内閣府の事例集は117頁あって、「合理的配慮」「環境の整備」「合理的配慮+環境の整備」の3パターンに分けて各障害への配慮の事例を掲載しています。
配慮の方法はこれだけではないし、障害の状態は皆バラバラで求めていることもイコールではないので、これを読めばすべて分かるというものではありませんが、どんな配慮ができるかを考える上での最初の一歩としてヒントになると思います。

今回はその中で「内部障害・難病に起因する障害」を抜粋してまとめました。

これまでに4種類の障害項目についてまとめています。
他の障害については下記のリンクを参考にしてください。
障害者への合理的配慮
*第1回:聴覚障害(言語障害)
*第2回:視覚障害
*第3回:盲ろう
*第4回:肢体不自由
今後も合理的配慮の原稿を作成するたびに追加していきます。

まだすべてをまとめていないので、全部の障害について一気に読みたい方は、内閣府の事例の頁のURLを記載しておくので、そちらを見てください。
  ↓
【合理的配慮事例集(内閣府)】
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/jirei/example.html
※上記URLの頁の下段にPDF形式とTXT形式のボタンがあります。

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■内部障害や難病について

身体障害の中でも内部障害は体の内部の障害なので知識の無い人にはどういう不便があるのか全く想像がつかないと思います。
私も幅が広すぎて短時間では調べきれません。

内部障害の人の悩みの1つに周囲の理解の得にくさがあります。
若いのに優先座席に座っていると睨まれたり、皆もしんどいのに1人だけさぼっていると思われたりといった悩みはよく耳にします。
実際はとてもしんどいのに見た目で健常者と同じに思われるのはとても辛いことだと思います。

因みに内部障害には「心臓機能」「腎臓機能」「呼吸器機能」「肝臓機能」「膀胱・直腸機能」「小腸機能」「ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能」の7つの障害があります。
部位が異なれば症状や困り事も当然異なるのですが、内閣府の資料ではこの障害は一括りに「内部障害、難病に起因する障害」としてまとめています。
これは症状が多岐にわたるので細かく分けることができなかったのだと思いますが、私はどういう問題があるのか知りたい気持ちが大きかっただけに、あっさりしたまとめに少々物足りなさを感じてしまいました。

ここでは”難病”の言葉が入っているので、難病について少し調べてみました。
2024年4月時点で「難病医療費助成制度の対象疾病(指定難病)」とされている疾病数は341疾病あります。
難病の定義を調べると、医学的に明確な線引きはないようですが、一応次のように定義されているようです。
①発病の機構が明らかでない。
②治療方法が確立していない希少な疾病。
③当該疾病にかかることにより長期にわたり療養を必要とする。

要するに、難病の人は現状では治せる見込みがなく 長期にわたって不自由を強いられているということで、341疾病の中には内部障害とは関係ない障害も入っていますが、関連している疾病も多いです。

下記に内閣府の事例をまとめましたが、私が読みながら感じたのは、当事者本人に状態を聞かないとどういう配慮が必要なのか分からないということでした。
障害部位や病気の内容によって症状や困り事はそれぞれ異なるので、当事者の声にしっかり耳を傾けるようにしたいと思います。

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■合理的配慮の提供事例【内部障害・難病に起因する障害】

(出典:内閣府 「障害者差別解消法【合理的配慮の提供等事例集】」)
※文面は多少変えています。

【Ⅰ. 生活場面例:サービス(小売店、飲食店など)】

事例Ⅰ-①
難病が原因で身体障害があり、立った姿勢を保つのが難しいので、座ったまま手続をしたい。
(対応)窓口の職員が待合室の座席に行き、手続を行うこととした。

事例Ⅰ-②
保険の申込みをしたいが、難病に起因する障害があり、手が硬直してしまうことから、申込書に自署ができない。
(対応)家族が同席し、代理で記入した。

事例Ⅰ-③
銀行のカード発行手続を行いたいが、化学物質過敏症により郵便物を開くことができないため、郵送での申込手続が難しい。
(対応)ウェブ(Web)にて申込手続を行った。

【Ⅱ. 生活場面例:教育】

事例Ⅱ-①
定期的な通院が必要であることから、授業や試験を欠席することが多くなってしまう。
(対応)担当教員の間で授業や試験における配慮について情報共有を行い、欠席が多くなる場合には、レポート提出などの代替手段を設けることとした。

事例Ⅱ-②
難病に起因する障害があり、体調が不安定でなかなか授業に出席できない。
(対応)病気等により、相当の期間欠席する場合は、同時双方向型授業配信等を行い、授業を受けられるようにした。同時双方向型授業配信で授業を受けることが難しい場合は、オンデマンド型の授業も活用した。
また、欠席時の代替評価として、課題の事後提出や追試の実施なども行った。再履修となった場合には、それまでに提出した課題や実験の成果などを転用した。

事例Ⅱ-③
学校にいる間も定期的に薬を飲む必要があるが、うっかり飲み忘れてしまうことが何度もあった。
(対応)生徒本人がアラーム機能付きの時計を持つようにしたほか、担当教員も一緒に時計のアラーム時間を設定して、薬の飲み忘れがないよう声をかけるようにした。

事例Ⅱ-④
試験中に薬と水を机上に置くことと、試験中に服薬することを認めてほしい。
(対応)試験監督者が事前に確認を行った上で、机上に置いて試験中に服薬することを認めた。

事例Ⅱ-⑤
汗をかきやすいため授業や試験の時に配慮してほしい。
(対応)授業や試験の際にタオルの持込みを認めた。

事例Ⅱ-⑥
難病に起因する虚弱体質のため呼吸が苦しくなることがある。このため、携帯型の酸素吸入器を学校に持参したい。
(対応)持参した酸素吸入器を保健室に置いて必要なときに使用することとし、また校外での活動の際は養護教諭が携行・管理した。

事例Ⅱ-⑦
難病に起因する障害により手が震え、字を書くのに時間がかかるため、定期試験の時間を延長してほしい。
(対応)医師の意見を踏まえて校内で検討し、大学入試センター試験の対応を参考に時間を延長した。

事例Ⅱ-⑧
下肢障害と排尿障害があるため、試験の際に一定の配慮をしてほしい。
(対応)本人の希望に基づき出入口付近に専用の座席を確保し、途中の入退室等をしやすいようにした。

事例Ⅱ-⑨
内部障害があり、便失禁した際にシャワーを使用したい。
(対応)校内合宿所等のシャワーの使用を許可した。

事例Ⅱ-⑩
必修の授業に実験があるが、ペースメーカーを使用しているため、実験機器によっては参加できない。
(対応)担当教員と学生間で協議し、参加できない実験について、別室でオンラインによる視聴を行うことができるようにしたり、実験の流れや結果等が分かる動画や資料を提供したりした。

事例Ⅱ-⑪
てんかんの持病があり、屋外で作業する際に太陽の光がまぶしく気分が悪くなるため、サングラスを使用したい。
(対応)大学の産業医が面談し、サングラスの着用を認めることとした。

事例Ⅱ-⑫
内部障害があり光に対して感覚過敏があるので、屋内外での活動では配慮をしてほしい。
(対応)教室の窓側に座席が指定された場合はカーテンやブラインドを閉めることとし、屋外活動が必要となる授業では日陰に入ることや日傘をさすことを許可した。

事例Ⅱ-⑬
症状の特性などについて、クラス担任の教員だけではなく、各教科担任の教員にも知っておいてほしい。
(対応)本人と事前に周知する内容を確認した上で、クラス担任が聞いたことは教科担任に伝え、関係者全体で情報共有するようにした。

事例Ⅱ-⑭
マラソンなどの体育の授業は、体力が落ちてきており難しい。
(対応)参加が難しい競技は見学し、レポートを提出することで成績を評価した。

事例Ⅱ-⑮
難病に起因する障害があるので、階段の昇降や体育の授業で配慮してほしい。
(対応)本人と保護者と学校で面談を行い、主治医からの意見に基づき所属クラスの教室を1階にするとともに、体育ではその日の体調等に応じて学習内容の変更・調整を本人と相談しながら行うようにした。

事例Ⅱ-⑯
大学の必修の授業として2週間の研修旅行があるが、内部障害があり、食事制限があるため個別対応をしてほしい。
(対応)大学の研修施設のバリアフリー室(個室)を利用し、食事も個別にメニューを変更することで個別対応を行った。

事例Ⅱ-⑰
運転免許を取得したいが、ICD(植込み型除細動器)を使用していることから、教習所の教習の際は電波による影響が無いようにしてもらいたい。
(対応)電波の送信部と受信部の間に入るとICDが誤作動を起こして生命の危険につながるおそれがあることから、教習車両のドアの開閉の際にはリモートキーを使用しないこととした

【Ⅲ. 生活場面例:医療・福祉】

事例Ⅲ-①
子供が疾病により医療的ケアを必要とすることになったが、保育園を引き続き利用したい。
(対応)医療的ケアが必要な児童の受入れが可能な園に転園し、医療機関から看護師を派遣する制度を活用しながら通園することとなった。

【Ⅳ. 生活場面例:新型コロナウイルス感染症対応】

事例Ⅳ-①
内部障害があり、感染症による重症化リスクが高いと言われているので、学校内で他の学生と一緒に実験を行う必要がある場合、感染のリスク回避のための配慮をしてほしい。
(対応)実験は別室でティーチングアシスタント又は教員が1名指導に付き添い、個別に行うこととした。

事例Ⅳ-②
難病に起因する障害があるが、商業施設で買物をした際、今までは購入したものを袋に入れてくれていたのに、「入れられない」と断られた。
(対応)「新型コロナウイルス感染症対策で入れることができなくなった」という理由を伝えた上で、使い捨て手袋を用いて袋に入れるなど感染症対策に配慮した方法で行うことについて理解を求めるようにした。

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■環境の整備事例【内部障害・難病に起因する障害】

(出典:内閣府 「障害者差別解消法【合理的配慮の提供等事例集】」)

【Ⅰ. 生活場面例:教育】

事例Ⅰ-①
気管切開で吸引処置が必要な生徒の入学に備え研修等を行った例。
(事例)学校でも吸引処置を行えるように学校看護職員を配置し、養護教諭等にも手技の研修等を行った。

【Ⅱ. 生活場面例:サービス】

事例Ⅱ-①
来客者用トイレを改修した例。
(事例)ストーマを装着した方が来客した際にも使用できるよう、オストメイト対応の多機能トイレに改修した。

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以上が内閣府の事例です。

内部障害や難病に起因する障害の数は多いので、私はこの内閣府の事例だけではよく分かりませんでした。
基本的に一般の人が全ての疾病を理解するのは無理な話なので、その都度目の前の人に対応して行くことになります。
どういうことが求められるのか、これは追々調べて知識を溜めて行こうと思います。
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他の障害については下記の記事を参考にしてください。
障害者への合理的配慮
*第1回:聴覚障害(言語障害)
*第2回:視覚障害
*第3回:盲ろう
*第4回:肢体不自由
*第5回:内部障害・難病に起因する障害(この記事)

 

 

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