ナンチョーな私の気まぐれ日記(45)私が苦痛を感じる聴力検査

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ナンチョーな私の気まぐれ日記

大きな音への感じ方は、健聴者と難聴者では異なる。
聴こえる人は、大音量に対して 音量が大き過ぎて煩いと感じる。
難聴になって音が聴こえにくくなると、聴こえる音量は下がるけど、音量がダウンした分だけ平気になるのかというと、そんな単純なものではない。
難聴者には聴覚過敏で不快な音が異様に大きく感じる人もいるし、失聴していても音に苦痛を感じることもある。

今回は、聴力検査で味わった音の苦痛について話したいと思います。

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■聴力検査

聴力検査にはいろいろあります。
聴力検査と無縁の人はどんな検査があるのか知らないと思います。
検査の種類について簡単に知りたいという人はこちらを参考にしてください。
聴力検査にはどのような種類があるのか?(聴力検査の種類)

一般に「聴力検査」と言えば、「純音聴力検査」のことを指します。
ヘッドホンを装着して、ピーと聴こえたらボタンを押す検査です。
この検査の詳細については、「オージオグラムの見方と、身体障害者手帳の基準となる平均聴力の算出方法」の中で説明しているので、よく知らない方はこちらを参考にしてください。
オージオグラムの見方と、身体障害者手帳の基準となる平均聴力の算出方法

ピーと聴こえたらボタンを押す検査は 健康診断で経験された方もいると思いますが、健康診断の検査はとても簡易です。
耳鼻科で受ける検査の場合は、125Hz~8000Hzの7種類の高さの音を防音室できちんと測定します。
健康な耳の人の場合、どの周波数も10dB以下の音が聴こえます。
10dBの音は、呼吸音ぐらいの音です。
ちなみに25dB以上の音量が聴こえない人は難聴だと言われます。
デシベル(dB)の大きさのことを知りたい人は、こちらを参考にしてください。
デシベル(dB)は絶対値ではなく倍率

健聴者と難聴者の大きな違いは、音量だけでなく、周波数毎の聴こえの差にも現れます。
健康な耳の人は、どの高さ(周波数)の音も同じぐらいの大きさで聴こえます。
健康な耳の人が難聴を想像すると、一律どの音も同じように聴こえにくくなることを想像しますが、実際は全体が一律に悪くなる人は非常に稀で、大抵は周波数によって聴こえる音量に差が出ます。

この聴こえの測定結果を図にしたものをオージオグラムと言いますが、このオージオグラムの形は、難聴者の場合、様々な形があって個性的です。
これはどういうことかと言うと、難聴者の聴こえ方は人によって全然違うということです。

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■聴こえなくても大音量が平気なわけではない

さて、ここから本題の苦痛の話です。
私の難聴の特徴は、高音と低音の聴こえの差が極端に大きいことでした。
過去形にしたのは、今は低音が低下している最中で、差が縮まってきたからです。

私の場合は、高音は早くから失聴し、低音は長い間 健聴者と同じレベルで聴こえていました
そんな耳なので、難聴歴は長いけれど、障害者になったのはそんなに前ではありません。
障害等級は平均値で判定しますが、その判定に使う周波数は500~2000Hzの狭い範囲なので、高音が失聴しても中間の音が聴こえていれば障害者には認定されないのです。

私は成人してから難聴を発症しましたが、発症時は軽度でした。
そこから徐々に進行して、今は立派な聴覚障害者ですが、まだ完全失聴には至っていません。
だけど失聴している音があるので、失聴している音を検査でどのように感じるかの経験はあります。

他の人が同じかどうかは分からないので、ここからは私個人の体験談として読んでください。
聴力検査では、オージオメータという機器を使います。
ヘッドホンを装着して 片耳ずつ 各周波数の音を流して検査します。
検査では、ピーという音が聴こえる(ボタンを押す)まで音量を上げて行きます。
高音を失聴している私は、4000Hz以上は 最大音量まで上げても聴こえません。
だけど、最大の音量を流したことは分かります。
なぜなら、脳がクラッとするからです。とても気持ちの悪い衝撃です。
初めてクラッとした時は自分の体がおかしくなったのかと思いましたが、聴力検査のたびに味わっていると、最大音量(100dB以上)を流したために起こっている症状だと気付きます。
失聴している音が高音なので、これが低音でも起こるのかは分かりませんが、脳がクラッとする刺激はかなり強烈で、こんな強い刺激を与えて体は大丈夫なのか?と心配になります。

このほか、鼓膜がこそばゆくなるというのもあります。
音は聴こえないけれど、鼓膜が震えているのが分かるのです。
これも気持ち悪いのですが、私の鼓膜は正常なのだなと思いながら我慢します。
こそばゆさは音が聴こえるまで続きます。
不思議と音が聴こえると こそばゆさは感じなくなります。
これはどの音にも生じるわけではないので、振動の速さ(音の高さ)で違うのだと思います。
私の場合、周波数毎の聴こえの差が大きいため、音の高さによる差を比較することができないのでよく分かりませんが、低音ほど生じやすそうな気がします。

この純音聴力検査には、気導検査骨導検査があります。
ヘッドホンから出た音を鼓膜を通して聴くのが「気導検査」
耳たぶの後ろに骨導レシーバーというものを当てて、耳の骨に直接振動を加えて聴こえを測定するのが「骨導検査」
この骨導検査では耳の後ろと額の2カ所で頭を挟んで固定します。
なので、大音量になるとブルッブルッと額に強い刺激を感じます。
額からコードがぶら下がっていると目の前をコードが激しく揺れるので 凄い音量を流していることは視覚的に分かります。
思いっきり挟んでいるので額が痛いのですが、流している周波数の音が聴こえるまで我慢です。聴こえない音の時は最大音まで聴かされるので、これも辛い検査の1つです。

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■聴こえる苦痛

私の場合は失聴している音と、普通に聴こえる音の両方があったので、聴こえる苦痛も味わい続けました。
それはどういう苦痛かというと、正常な聴こえの周波数で、爆音を流されることでした。
失聴した音の後に聴かされる次の音は あまり下げてくれていないようで、毎回大音量の衝撃で飛び上がります。
正常な周波数の音は 健聴者と同じ大きさから始めるべきなのに、下げるのが面倒なのか、頭から聴こえないと決めつけているのかは分かりませんが、適当な音量から開始しているように私は感じています。
こういう無配慮なことをされるたび、耳が壊れるかと思うほどの大音量の衝撃新たな耳鳴りが発生してしまいます。こうなると検査のピー音と耳鳴りの音の判別が難しくなります
何も言わなければ8~9割の人が無配慮な検査をするので、そのうち「普通に聴こえる音があるので、聴こえる周波数の所は小さな音から始めてください」と頼むようになりましたが、それでも大きめの音から開始するので、頼み忘れた時はほんとに恐怖です。

この聴こえる苦痛は、50音を聞き分ける検査(語音聴力検査)でも味わったことがあります。
難聴者は聴こえる音量がダウンするだけでなく、言葉の聞き取りが困難になるので、音量を上げることでどれだけ聞き取りが向上するかを測定するのが「語音聴力検査」です。
健康な耳の人は、聞き取れて当たり前の簡単な検査ですが、感音難聴の私には超が付くほど難しい検査です。
この検査では「最良語音明瞭度」を探るために、音量を上げて数回検査します。
一般に音量を上げれば正答率は上がりますが、上げ過ぎると激しく音割れして拷問級の苦痛になり、聴くどころの騒ぎではなくなります。
この検査は1回が長いので、入れ過ぎの時は直ぐに「無理です」とギブアップします。
中には無理だと訴えているのに続けようとする人もいますが、流石にこれは虐待になるので止めてください。

余談ですが、500~2000Hzの平均聴力が60dB台の時にこの検査をした時の話をさせてください。
この検査は女性の声で50音の発音がランダムに読み上げられて行きます。
発音を形作っているのは複数の周波数ですから、聴こえる音があれば 聞き取れなくても音は聴こえます。
私が60dB台の時は、まだ低音の聴力が正常域を維持していたので、上げ過ぎると聴こえ過ぎます。
この頃は 聞き取りの正答率が50%有るか無いかの微妙な時だったせいか、検査回数が多く、かなり大きな音まで入れられました。
この検査は補聴器などで音を入れたらどれだけ機能の回復を見込めるかを確認するのが目的なので、最良の語音明瞭度を測定できるまで、音量を大きくしていくわけです。
聴かされる音があまりに大きいので、こんな大きな音を聴かされ続けたら難聴が酷くなるのではないかと怯えながら、歯を食いしばって大音量の苦痛に耐えて答えていましたが、最後はどうやら90dBを流したようで、これは音が流れた瞬間に耐えきれず、即、中断を申し入れました。
90dBは怒鳴り声や騒々しい工場に相当するレベルですから、正常な周波数が残っていればまさに耳元で怒鳴られるのと同じようなもの。平気でいられるわけがありません。
もしかすると健聴な人はこの大音量に耐えて正答できるのかもしれませんが、聴覚過敏で音割れが生じている私には聴こえる音自体が破壊音になっているので苦痛なだけで聞き取りはさっぱりです。
難聴者の耳は、音が大きければ聞き取れるという単純なものではないのです。

検査のたびに思います。
純音検査も語音検査も、前回のオージオグラムを見れば、正常に聴こえている音があるのは一目瞭然なのに、なぜに自分がされたら腹が立つであろうレベルの音を平気でいきなり入れたりするのでしょう?
難聴者は自分より聴こえないから平気と 決めつけてはいないでしょうか?

難聴者の耳も、健聴者と同じしくみを持った耳です。
むしろ器官の状態が弱っている難聴者の方が、大音量に対する耐性は弱いかもしれません。
聴かされる音が大き過ぎれば耳がキーンとなるのは難聴者も同じです。
そのことを念頭において乱暴な検査だけはしないようにして欲しと思います。

これまた余談ですが、今の私の平均聴力は90dB前後まで落ちていて、低音もだいぶ落ちているので、今だと70dB以上の音を入れないと音が届きません。
先ほどの余談の耳鼻科とは別の耳鼻科での話ですが、数年前に久々に語音聴力検査をしました。
この時は すでに両耳とも80dB台に突入していて、低音の難聴も進んでいました。
久々の語音聴力検査だったのですごく緊張しました。なぜなら、補聴器をしていても言葉を聞き取れない耳になっているので、検査の説明をするアナウンスを聞き取る自信がなかったからです。
防音室に入り、ヘッドホンも装着して 検査が始まるのを待っていたのですが、いつまで経っても開始しません。
何となく微かに何か聴こえた気がして、始まっているのかもしれないと察した私は、ガラスの小窓をノックして検査している人を呼びました。「すみません。始まっていますか? ほとんど何も聴こえないんですけど・・・」と言うと、中断して、医師の元に相談にいっていました。
どうやら60dBを流していたようです。
平均聴力80dB以上の難聴者が60dBの音を聞き取れるわけがないのは、オージオグラムを見れば一目瞭然なのに・・・・・・と、これまた不思議を感じましたが、よく考えてみると 60dBは普通の会話音ぐらいなので、基本はそこから始めることになっているのかもしれません。

この「語音聴力検査」は滅多に受けることはありませんが、難聴歴の長い私は「純音聴力検査」は数えきれないほど受けてきました。
私の場合は進行性難聴なので、聴力が落ちるたびに検査を受けるし、オージオグラムを参考に補聴器調整をしてもらっているので、これまで 多くの人と検査結果の話をしました。
すると結構耳にするのが、「検査をする人によって正確性が異なる」という話です。
実際にあちこちで検査を受けていると、上手下手があるのは感じます。
なぜこういう結果になったのだろう?とオージオグラムを見ながら 首を傾げたこともあります。
私は専門家ではないし、機械を操作したこともないので、どうしたら人によって検査結果に差が出るのか分かりませんが、検査を受ける側としては雑か丁寧かの差は感じるので、その辺りも正確性に影響しているのかもしれません。

いずれにしてみても、患者としてお願いしたいのは、検査の正確性以前に、患者の苦痛を度外視して不必要に大きな音を聴かせてしまっている人が意外に多いので、患者の耳を攻撃しないように気を付けてほしいということです。

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■疑問

この章で書くことは、調べたことではなく、私が感じていることなので 感想として読んでください。

検査で大音量の苦痛を味わうたびに常々疑問に思うことがあります。
それはこんなに大きな音を聴かせて大丈夫なのか?ということです。
検査で使っている音量が安全な音量を超えないようにしていることも、長時間聴かせているわけではないから大丈夫なのも理屈としては分かるのですが、耳鳴りが生じるほど乱暴なことをされるとやっぱり疑問になります。

ちなみに音は振動です。
内耳の細胞は振動を拾って脳に伝えています。
音が大きければ振動も大きいわけですが、この振動の大きさはリンパ液の流れの強さに影響しています。
耳の働きについては、耳の有毛細胞の姿と働き で詳しく書いたので、ここでは説明を省きますが、耳の働きを知りたい方はこちらを読んでください。
耳の有毛細胞の姿と働き

例えばですが、耳の許容範囲を超えた爆音を聴いてしまったとしたら、爆風で吹っ飛ぶのと同じようなことが有毛細胞に起こります。
これは聴こえていても聴こえていなくても、同じ衝撃が内耳の中を駆け巡ることに変わりはないのではないかと思っています。

するとここで疑問が生じます。
難聴者の有毛細胞は既に傷ついている状態です。
これは健康な耳の人の細胞より衝撃に弱いということはないのだろうか?と思ったりするのです。

この疑問は自分の感覚から生じています。
難聴者には聴覚過敏を起こしている人が多いですが、私にも聴覚過敏があります。
進行して行く過程で過敏を起こす音に変化があるので、私の感覚では失おうとしている音に過敏症状が現れているように感じています。
そのせいか、聴覚過敏は有毛細胞の悲鳴のように私には感じられるのです。
「怪我しているのに乱暴にしないでー! 痛いようー!」という感じです。

例えば、騒音級のレベルで音楽を流している店に長時間いたり、イヤホンで長時間大音量で音楽を聴いた時などに、耳の疲れを感じたり、聴こえにくくなったりした経験を持っている人は少なくないのではないでしょうか。
これは耳の有毛細胞が疲弊しているのですが、軽い疲弊状態なら、しばらく耳を安静にしていれば自分の力で回復します。
この回復力は、健聴者も難聴者も同じなのでしょうか。

進行性難聴の場合はまさに破壊進行中の状態ですから、これが健聴者と同じ回復力を持っているとは考えにくく、大音量に対する耐性は健聴者よりも弱いのではないかと思うのです。
というのも、電話での会話がまだ可能だった時、話が少し長くなるとてきめんに耳の調子が悪くなっていましたが、この耳の疲れ方は健聴だった時とは大違いでした。
難聴は聴こえていない分、大音量に晒されても平気と思われがちですが、実はそうではなく、肉体的なダメージは難聴が進むほど大きいのではないかと思うのです。

この疑問は学問的にどうなのかは分かりませんが、現在も進行形で聴力が落ち続けている私の体感では、難聴者の耳は健聴者より遥かに弱いと感じています
検査で大音量を聴かされた後は、しばらく耳がおかしくなりますが、健聴な耳なら一時的な不快で済むのかもしれません。
なので、難聴だからこれぐらい大きくても平気だろうみたいな感覚で検査をしているのなら、そういう感覚で検査するのは今すぐ止めてください。

聴覚関係の仕事に携わる方々にお願いします。
皆が皆そうとは限りませんが、健聴者よりも音にデリケートな難聴者は少なくないと思うので、突然大音量を聴かせるような乱暴な検査だけはしないようにしてほしいと思います。

今回も最後まで読んでくださりありがとうごいました。
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[前回のナンチョー日記]
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