あなたは聴覚過敏をご存知ですか?
私は長年、聴覚過敏を間違って解釈していました。
そのため、自分が聴覚過敏になっても、自分はそうではないとずっと思っていました。
私が聴覚過敏の言葉を知ったのは、まだ耳が健康で、耳のトラブルを知らなかった頃です。
確か発達障害の人の自伝をきっかけに知ったと思います。
聴覚過敏は「聴覚」「過敏」と書くので、当時の私は小さな音まで敏感に聴こえることを想像しました。
その後に聞いた説明でも「音が聴こえ過ぎてうるさい(つらい)」と表現する人が多かったので、いつの間にか「聴覚過敏」とは「小さな音まで聴こえ過ぎる」状態だと勝手に思い込んでいたのです。
こういう勘違いをすると、聴こえない難聴者が聴覚過敏になるとは考えません。
自分が聴覚過敏になって、人から「聴覚過敏?」と訊かれても、「私のは難聴」とトンチンカンな返事をしていた時期があります。(苦笑)
もちろん、今は 聴覚過敏が何かは知っています。
聴覚過敏は、実際に聴こえる音量の問題ではなく、入って来た音をどう感じるかの感覚の問題です。
聴覚過敏の症状は、それを引き起こす原因や人によって異なりますが、共通するのは「音が苦痛」なことだと思います。
ちなみに私は 難聴で起こる聴覚過敏しか知らないので、ここで話す症状は、難聴が原因のケースと考えてください。
そして、同じ難聴者でもその人の聴こえ方の状態で、苦手な音や感じ方が違うので、全ての難聴者が私と同じというわけでもありません。
だけど、原因が難聴であれば 私と似ていることも多いと思うので、参考に私の体験をお話します。
■音が大きく聴こえはじめて、回復と勘違いした話
私が難聴を発症したのは20代の半ば。
最初は軽度でした。
私の難聴は進行性なので、聴力は、その後も低下し続けていきます。
難聴を発症するまで、私は耳のトラブルとは無縁だったので、耳の知識はゼロでした。
そんな私がじきに遭遇した症状の中に、「音がうるさい」というのがありました。
最初は単純に特定の音が大きく聴こえはじめただけだったので、私はてっきり自分の耳が回復しているのだと期待しました。
だけど、ちょっぴり疑問も感じていました。
私が「この音、ちょっとうるさいね」と周りの人に言うと「そう?」「うるさくないよ」「普通だと思うけど」などと返されるからです。
私にはしっかり大きな音に聴こえるのに、周りの人には普通らしいのです。
難聴の私が、突然、健聴者よりもよく聴こえるようになるというのも不思議です。
それでも、本人は音が大きくなったと感じているので、当然に聴こえが回復していると考えます。
だけど、この期待は大きく外れました。
これは良くなっているのではなく、逆に 聴力が低下しているための症状だったのです。
そして、聴覚過敏の前触れでもあったわけです。
■聴力が低下すると、その分大きな音が苦手になる
難聴にならなければ、一生知らなかったかもしれないことに、難聴になると音の許容範囲が狭まるというのがあります。
聴力が低下すると、当然小さな音が聴こえなくなります。
それと並行して、大きな音への耐性も落ちてしまうのです。
心地よく聴くことができる音量の幅が下から狭まるだけでなく、上からも狭まるということです。
私が普通の音量をうるさく感じたのも、大きな音量への許容範囲が狭まったからでした。
そのことを知らなかった私は、「音がうるさい」=「よく聴こえている」と勘違いして、ぬか喜びしたのでした。
音が聴こえなくなるのと並行して、大きな音への耐性も落ちるというのは、当事者としては「そんな、殺生な・・・」と泣きたくなります。そりゃそうですよね。聴こえないのに、大きな音まで苦手になるのですから。
そして、このことは多くの人に知って欲しいと思います。
なぜなら、音の聴こえない難聴者には大声を出せばいいと考えている人が多いからです。
実際には大声はマイナスです。
難聴者が耐えられる音量は、健聴者よりも遥かに小さいので、健康な耳なら平気な声でも、難聴者には飛び上がるほど苦痛なボリュームで頭に響くことがあるのです。
私の場合は、怒鳴っている人の声は 音が割れ割れ状態になり苦痛度も倍増します。
怒鳴り声に対する体の反応は、苦痛を避けるために反射的に大声から意識を逸らそうとしてしまうので、怒鳴っている人の言葉は完全に解読不能になります。(※補足:難聴者は言葉を聞き取るのが困難なので、集中して話を聞く必要があります)
繰り返します。
難聴者は、小さな音が苦手だけど、大きな音も苦手なのです。
聴こえない人ほど補聴器の調整が難しいのも、聴力が低下するほど快適に聴くことのできる音量の幅が狭まってしまうからです。
■難聴の私の聴覚過敏(どんな感じか)
「音がうるさい」という言葉には、いろいろな意味があります。
単純に音量が大きい、わずらわしい、やかましい、耳障りなどなど。
聴覚過敏の「うるさい」は、それを超えて耳や脳を攻撃されているような苦痛を伴います。
我慢できない音質の音が頭の中で大きく響くと言えば良いでしょうか。
例えば、カラオケなどでマイクをスピーカーに向けてしまった時に起こるハウリングの音。
「キーン」とか「ピー」とかいう不快な音は、思わず耳を塞ぎたくなりますが、あれに似ているかもしれません。
そのほかでは、黒板を爪でひっかいた時に出るキーーーという音や、お皿をフォークでひっかく音、また、マーカーペンのキュッキュッという音など、背筋がゾワッとするような不快な音を例えにする人もいます。
私の場合は前者。
生理的に感じる音の苦痛より、脳をガーンと攻撃されるような衝撃的苦痛に近いです。
この衝撃が起こるのは、全部の音質ではなく、特定の音で起こります。
衝撃を別の言葉に置き換えると、やっぱり「響く」でしょうか。
この響く感じは説明しづらいのですが、私の場合は、耳から入った音が脳に突き刺さるような感じで、その衝撃が響く感じです。
一時期の私は、紙のパリパリ音が拷問で、仕事中に近くの席の人が書類やポスターなど紙類の整理をし始めると、もう地獄でした。
最初の一発目の音がグサッと脳に突き刺さり、そのあとも続くパリパリ音に脳の中をかき回される感じで、ほんとに「やめて~~~!」と叫びたくなりました。
この苦手な音は、人によって違います。
食器のガチャガチャ音がダメな人もいれば、机にペンを置く音がダメな人もいます。人の笑い声がダメな人もいれば、犬の吠える声がダメな人もいます。いろいろです。
ちなみに事例に挙げた音が苦手な難聴者は多いです。
進行性難聴の私は、音を失って行く過程で、いろいろな音の苦手を味わいました。
今まで平気だった音が、ある日突然頭に響くようになったりという変化を何度も味わいました。
逆にこの前まで苦痛だった音があまり苦痛ではなくなったというもあります。これは音が完全に聴こえなくなったからなので、喜ぶ気にはなれません。(※補足:完全失聴していない難聴者には周波数によって聴こえる音と聴こえない音があり、私はその差がとても大きい難聴です)
以上が私の味わっている聴覚過敏です。
原因が耳ではなく、脳にある場合は、もっと深刻な反応を起こすことも多く、聴覚過敏の症状もここで語ったものとは全く違うかもしれませんが、基本的に聴覚過敏は 耳を塞ぎたくなるほど苦痛なものです。
健康な耳の人も、マイクとスピーカーを近づけた時の大きなハウリングの音を何度も聴かされたり、苦手な音を聴かされ続けたりしたら 苦痛だと思います。
それが日常の生活音で頻繁に起こっているのが 聴覚過敏です。
ちなみにイヤーマフを装着している人は、難聴の聴覚過敏を超えて、音に対してもっと深刻な問題を抱えている人が多いです。
これは配慮が必要なレベルです。
見た目が健康そうでも、私たちには想像ができないような苦痛を抱えている人がいることを忘れないようにしたいと思います。
今回も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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