私たちの体内で働く数十兆個の細胞たち

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からだのエッセイ

からだのエッセイ 第13回

私たちは、普段、自分を個として捉えている。
自分の体が数十兆という膨大な数の生命体(細胞)でできていることを意識することはあまりない。

自分が見ているこの手は、数年前と比べて見た目は同じである。
でも、この手を構成している細胞は数年前とは全くの別物に入れ替わっている。
改めてそのことを意識すると不思議な気持ちになる。
自分の体なのに、自分の意識していない所で生死が繰り返されているのだから、考えてみれば衝撃である。

お役目を終えた細胞たちの死骸を私たちは毎日のように見ている。
だけど細胞の生死を特に意識することはない。
例えばお風呂で体を洗うと出てくる垢、あれは表皮細胞の死骸だが、私たちは単に垢としか考えない。
体内に細菌やウイルスが侵入したら、体は白血球を大量に投入して闘う。闘って壊れた白血球の死骸は 膿や鼻水や痰に混じって排出されるが、黄色や緑色の鼻水を見たからといって、白血球を意識することはない。
毎日毎日、体のために働いてくれている細胞たちだが、その働きが目に見えないために、私たちは細胞に甘えて、平気で体に負担をかける。

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■「はたらく細胞」という漫画

私たちの体の働きを面白く描いた本に「はたらく細胞」(清水茜 著)という漫画がある。アニメになってTV放映されたのでご存知の方も多いと思うが、人間の体の中で働く細胞たちを擬人化して、体内で繰り広げられる様々な闘いを物語にした漫画である。
ここまで見事に擬人化されると、自分の体内はどんな環境なのだろうと意識させられてしまう。
例えば、赤血球が体中に酸素を運んでいることは知っているが、この単なる知識が、宅配する人の姿に置き換えられると頑張っているのだなあと感じられるし、菌と闘う白血球も擬人化すると自分の命を顧みず 体のためにすごくまじめに働いているのだなあと感じることができて、ちょっと体に感謝したくなる。

今、私は「はたらく細胞BLACK」という漫画を読んでいる。これは上記の「はたらく細胞」とは著者は異なるが、監修は清水氏で「はたらく細胞」と同じく体内の物語である。
こちらは劣悪環境の超ブラックな体内の物語で、私はこれを読み出してから、自分の体内を強く意識するようになった。
不摂生で不健康な体は、ほんとにブラック企業そのもので、どんな人の体に生まれるかによって細胞の運命は違うのだと、ちょっと細胞視点で考えさせられる。
例えば、先の「はたらく細胞」では、赤血球が平らな道を台車でスムーズに荷物を運ぶ場面が多かったのだが、「はたらく細胞BLACK」では、血管内がガタガタで働く環境は劣悪。
こういうのを見ていると、自分の血管の状態も気になってくるし、苦しむ細胞たちを見ていると、体の主である自分は、体内で働く細胞のことを考える責任があるなあと思ってしまう。
運動や健康な食事など体に良いことをすると「体が喜ぶ」と表現する人がいるが、細胞たちを擬人化してみると、その感覚がとてもよく分かる。
私は、ずっと体に対して物質的な捉え方をしていたので、体が喜ぶというより、整備するという感覚だったのだが、よく考えてみると、自分が死にたいと思っても細胞は生きようとするし、細胞は細胞で、私なる者の意志に関係なく生きているわけで、細胞にとって健康な環境が喜びであることに違いない。
細胞に感情はなくとも、自分の使命を全うするために頑張っているのだから、私も少しは細胞に協力しないとダメだなと思うようになった。

(余談)2021年に「はたらく細胞」の第2期と、「はたらく細胞BLACK」がアニメ化されるようだ。
この2つのアニメは、同じだと思って見たら、たぶん驚くことになると思う。「はたらく細胞BLACK」は少年向けではなく青年向けに描かれた漫画なので。

ちなみに、前回の「はたらく細胞」は字幕が付いていなかったが、字幕が無いと聴覚障害者は楽しめない。次回のアニメではぜひ字幕を付けてほしいと願っている。

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■細胞の寿命

細胞の数は体の大きさによっても違うが、よく耳にする60兆個というのは根拠が無いらしい。また、37兆個論もあるが、これも絶対ではなさそうではっきりしない。
間違いないのは、正確な数が分からなくとも、数十兆個という膨大な数だということ。

細胞の種類は200種類以上あるが、細胞の寿命は数時間で死ぬものから生涯入れ替わらずに生きているものまで差が大きい。
たまに、数ヶ月したら細胞が全部入れ替わって全く違う体になると言っている人を見かけるが、全部がすっかり入れ替わってしまうことはない。例えば、神経細胞や心筋細胞などはよほどのことがない限り再生も分裂もしないと言われている。
ちなみに一番寿命が短いのは、胃や腸の表面を覆っている消化管上皮細胞のようで、過酷な環境なだけにこの細胞は24時間程度で死んでしまうようだ。
「はたらく細胞」では、体中をめぐる血球が主役であるが、外敵と闘う白血球は数時間~数日、血小板で約10日間、赤血球は少し長くて3ヶ月ぐらいで入れ替わるようだ。
年齢による新陳代謝が話題になることも多いが、よく話題になる骨や表皮(肌)、骨は幼児期では1年半程度で入れ替わる。だけど、70歳以上になると3年位かかるので、年を取って骨折すると治りが悪い。
表皮は目で見ることができるので、新陳代謝の衰えを実感している人も多いと思うが、10歳代なら20日間程度で入れ替わるのが、20歳代で約28日、30歳代で約40日、40歳代で約55日と年を追うごとに入れ替わりの周期は長くなり、60歳以上では100日もかかる。
ちょっとだけ皮膚の話をすると、皮膚は紫外線や乾燥、またウイルス等の外敵から体を守っているので結構過酷な環境にある。外側から表皮、真皮、皮下組織の3層からなり、表皮はさらに角層、顆粒層、有棘層、基底層の4層に分かれている。基底層では常に新しい表皮細胞が作られ、古い表皮細胞は新しい表皮細胞によって角層へと押し上げられ、最後は角質という死んだ細胞になって、垢となってはがれ落ちる。
お風呂に入って体を洗えば、毎日、垢と対面するが、周期から考えると若い人とお年寄りでは垢の量は格段に違いそうだ。

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■大事にしたい自分の体

自分の体は、自分という意識だけの物ではない。
意識が死にたいと思っても、体を守ることが使命の細胞は頑張って生きようとする。
健康で若い体ほど、細胞たちの生きようとするパワーも強いだろう。
自分の体は、脳が認識している『私』だけの物ではない。
脳が記憶を無くしても、体は仕事を覚えているし、判断もする。
突然、目の前に物が飛んできた時、体は反射的によける。これは脳が命令したのではなく、体の判断である。
恐怖を感じれば、アドレナリンやコルチゾールが大量に放出され、体は闘争もしくは逃走に備えるが、これも本人の意志とは別に細胞たちの生きるための反応である。
私たちが自分だと思っているのは脳の認識。
好きなことに夢中になっていても、いちいち顕在意識が体に命令しなくても、頑張る細胞たちのおかげで私たちはすぐに動けるし、健やかに生きることができる。
だから、頑張っている細胞への感謝を忘れずに、自分の体を大切にしようと思う。

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■書籍紹介

記事内で触れた漫画を紹介しておきます。

「はたらく細胞」(清水茜 著)1~5巻
2015年より「月刊少年シリウス」で連載された漫画で、人の体内で働く細胞を擬人化した物語。
細胞が主役なので、体外で何が起きているのか、体の持ち主がどんな人なのかは分からない。だけど分からないからこそ、細胞の視点で体を見つめることが出来るので面白い。
体のしくみもよく分かり、おすすめです。
5巻まで出ていますが、1巻だけ下記に紹介しておきます。

「はたらく細胞BLACK」(原作:原田重光 漫画:初嘉屋一生 監修:清水茜)
2018年より「モーニング」で連載。
2020年9月に単行本の7巻が発売された。
上記の元祖「はたらく細胞」のほのぼのとした感じは全く無く、全巻通して殺伐とした感じで話は流れて行く。
大人版と表現されるように、題材も喫煙・飲酒・ED・淋病・円形脱毛症・水虫・胃潰瘍から始まり、不摂生な成人男性の体内のブラック企業ぶりが描かれている。
上記の「はたらく細胞」とは異なり、表現が若干エロチックなため低俗と評する人もいるが、不健康な生活をしている者にとっては、こちらのストーリーの方が体をいたわろうという気持ちにさせられる。
実は私も1巻を読んだ時、ちょっと残念な気持ちになった。
だけど2巻、3巻と読み進めて行くと、題材はより深刻になり、それに連れてエロ的な表現も薄れてきて、体内のブラックぶりに集中できる。
個人的には、先の「はたらく細胞」を読んだことのない方は、BLACKを読む前に「はたらく細胞」を読んで欲しいと思う。
なぜなら、「はたらく細胞」で描かれた体内環境を知っていると、「BLACK」がいかにブラックなのかがよく分かるからである。
不健康な生活をしている人にとっては、「BLACK」は他人事ではないので、自分の体の事を考えるきっかけとして、読んでみる価値はあると思う。
2020年9月に7巻まで出ており、8巻は2021年2月に発売予定。
下記に最初の1巻だけ紹介しておきます。

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