ナンチョーな私の気まぐれ日記(3)「聴こえの崩壊 【声の話】」

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ナンチョーな私の気まぐれ日記

私は大人になってからの中途難聴で、じわじわと聴力を失う進行性です。
ゆっくりなおかげ(?)で、聴力が低下して行くその過程の音の崩れをじっくり味わってきました。
話したいことはいっぱいあるけれど、一度では書ききれないので、今日はその崩れの体験の中から「声」に絞ってお話します。
次の機会に「音楽」や「言葉」のことなども話したいと思います。

さて、私の聴こえの崩れの話に入る前に、少しだけ簡単に耳の話をさせてもらいますね。
耳の知識が全くないと理解しにくいと思うので。

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■聴いている音は、皆、違う

健康な耳だと、自分が聴いている音は正しいと感じていますが、実のところ全く同じ聴こえの人はいません。
実際には他人の耳との聴き比べはできないのでどれぐらい違うのかは誰にも分かりませんが、皆、違います。

これは考えてみれば当たり前のことで、私たちの耳は音が入ってくる耳介の形からして皆違うし、穴の大きさや外耳道の長さも違えば、音の振動を伝える鼓膜や耳骨の形や硬さも違います。耳の中の温度や湿度さえも違うので、音を伝える器官だけ見ても同じ音質ではあり得ないことは容易に想像がつきます。
さらに耳の奥(内耳)に進むと、ここにはカタツムリみたいな形をした蝸牛(カギュウ)という器官があります。
ここでは入って来た音を信号に変えて脳に送っているのですが、この蝸牛、中には音に反応する毛みたいな細胞(有毛細胞)がびっしり生えていて、それぞれの細胞は自分の担当の音が決まっています。
この細胞は一度壊れてしまえば再生しないので、長く生きている内には少しずつ消耗して音が聴こえにくくなっていきます。これが老人性難聴です。
若くても、病気や事故、また薬害などの要因で回復不能な傷を負うこともあります。
たとえば、爆音を聴いて細胞が根こそぎ吹っ飛ばされたら、破壊された細胞が担当していた音は消えてしまいます。
元気な細胞が担当している音は聴こえるのに、破壊された細胞が担当していた音は聴こえないというアンバランスが起こるわけです。

もうお分かりだと思いますが、一般に難聴と聞くと音が全体に聴こえなくなるイメージを抱く人が多いのですが、そうではなく、破壊された細胞が担当していた音だけが聴こえなくなったり、脳に伝える神経の問題で聴こえなかったり、聴こえない原因は人さまざまで、世の中の難聴者には、音は聴こえるけど、正しい音が聴こえないという人がとても多く、私もその1人です。
そこを理解しないままだと、難聴者の聴こえの世界を想像するのは難しいので、簡単に耳の説明をさせていただきました。

具体的な耳のしくみについては、「耳が聞こえるしくみと難聴の種類」の記事の中で説明しているので、詳細はそちらを見てください。

それでは私の聴こえの崩壊体験談です。

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■崩壊していくテレビの音声(私のケース)

聴こえの状態は人によって違うことは今説明した通りです。
それぞれの聴こえの差は、音のバランスを崩してしまった難聴者ではとても大きいです。
今から語る体験談は、あくまで私のケースとして聞いてください。

私が難聴を発症したのは20代の半ば。
最初は高音が極端に落ちて、低音は正常、中間の音は軽度難聴からの出発でした。
聴こえる音と聴こえない音が極端なのが私の聴こえの特徴で、徐々に進行する中での私の感じ方は、まさに音が少しずつ間引かれていくような感じでした。

私が最初に大きなショックを受けたのはテレビの音声です。
当時の私は一戸建の2階で寝起きをしていました。
起床して部屋を出ると、先に起きた家族が階下のテレビを付けているので、いつもテレビの音が聴こえていました。
難聴を発症してしばらくは、階下のテレビの音は普通に聴こえていました。
女性が話しているか、男性が話しているかも分かったし、話の内容までは分からないけれど、声はしっかり届いていました。

最初のびっくり仰天は、この聴こえてくる声が男性か女性か分からなくなったことです。
普通、低い男性の声と、高い女性の声を間違うことはありません。
音は聴こえているのに、「ん? どっち?」となったのは大変ショックでした。
だんだん音の崩れが激しくなると、これは絶対に女性だと思いながら下に降りると、めちゃくちゃ低音の男性が喋っていたりすることもあって、これはさすがに凹みました。

だけどこんなのは序の口でした。
やがて部屋から出ても音が耳に届かなくなって、階段を降りている途中から音が届くぐらいまでに聴力が低下した時、2回目の大ショックが訪れました。
なんと、聴こえてくるテレビの声が、人間の声ではなくなってしまったのです。
昔のロボットの機械音のような声で、まるで宇宙人が話しているようで 思わず笑ってしまいました。
今時のロボットは人間の声をしていると思うので、ロボットというと逆に想像しにくいかもしれませんが、声から感情を抜き取ったようなキンキンした機械音で、とにかく人間の声からはかけ離れた声になってしまいました。
当然男女の別はありません。
みんなロボットになって話をしているのです。
ここまで壊れてしまうと、逆にユーモラスで、みんなに自慢したくなりました。
だけど現実はそんな愉快なものではなく、そこから先は地獄でした。(苦笑)

やがて、同じことが生身の人間の声にも起こりはじめたのです。

余談ですが、今の私は補聴器をしても、なぜかテレビの音はあまり聴こえるようにはなりません。補聴器の調整のせいか、私の耳がテレビの周波数と相性が良くないのか、それは分かりませんが・・・。

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■私の難聴(聴こえ)の特徴

現在の私の聴いている音は、完全にぶっ壊れています。
今は、音量的にも、言葉の聞き取りの面でも、しっかり聴覚障害者に認定されるレベルまで落ちてしまいました。

難聴を発症した初めの頃は、当然その後に比べれば音の壊れ方はマシだったのですが、その頃に感じていた感覚は、壊れたラジオの音を聴くような感じでした。
やがて安物のスピーカーで音量を最大限に上げた時の音割れ状態へと進んでいくのですが、音はまさにぶっ壊れて行くという感じです。

先にも書きましたが、私の難聴の特徴は、高音がほとんど聴こえなくなっているのに、低音は正常という異常な差から出発してます。

大群で鳴いているセミの声が 間近でも耳を澄まさないと聴こえないのに、離れた場所に置いている携帯電話のバイブ音は普通に聴こえるみたいなアンバランスな状態でした。

非常ベルが鳴っていても聴こえないのに、非常ベルの近くに行くとガタガタガタガタと振動音が聴こえるので鳴っていることは分かるという耳です。
非常ベルの音が聴こえなくても、中間の音が聴こえていれば、聴力レベルは軽度の診断になるのですが、今考えても「軽度というのはおかしくないか?」と思います。

生身の人間との会話は、声の高い女性の声は聴こえない音が多いので、発症時から苦手でした。
高音ダメで低音OKから始まった難聴なのに、テレビの音では低音が抜け落ちるのが早かったのは、今振り返っても不思議です。

ちなみに今は補聴器を使っていますが、生身の人間の声は、やはりみんな同じような声に聴こえます。
音の種類としてはせいぜい3種類ぐらいで、女性らしき声と、男性らしき声と、どっちでもない声という感じで、どの音もボヤ~ッとした感じで、音質の差はほとんどありません。
昔聴いていたクリアな声というのが どんな声だったのか、今では忘れてしまいそうです。

次回は「音楽」の崩壊体験を語りたいと思います。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

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[前回のナンチョー日記]
   ↓
ナンチョーな私の気まぐれ日記(2)「ちょっと寂しい難聴生活」

[次回のナンチョー日記]
   ↓
ナンチョーな私の気まぐれ日記(4)音楽と私①「最初の異変」

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