難聴の不快症状【②聴覚過敏】のメカニズム

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聴覚障害

前回は『耳鳴り』についてでした。
※前回の記事→ 難聴の不快症状【①耳鳴り】のメカニズム

今回は『聴覚過敏』についてです。
難聴なのに聴覚過敏というと妙な気がしますが、難聴者の聴覚過敏は少なくありません。

但し、聴覚過敏の症状も様々で、難聴の状態や程度によっても異なります。
ちなみに私は進行性の難聴者です。難聴発症時は軽度で、その後、徐々に聴力を落として現在は重度手前まで低下しています。進行していく過程で、聴覚過敏も変化しています。
例えば、難聴初期の軽度の時は、普通より大きく聴こえる音が現れて、難聴に聴覚過敏があることを知らなかった私は 耳が良くなったのだと勘違いして大喜びしたことがあります。その後、徐々に音が響くようになり、更に難聴が進むと、脳に突き刺さるような耐え難い苦痛へと変わって行きました。

耳鳴りにいろいろあるように、聴覚過敏もいろいろです。

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■聴覚過敏とはどんな症状ですか?

例えば、食器の当たる音や、甲高い声、キーボードのタイプ音など、ある特定の音が 通常より大きく聴こえたり、耳や頭に響いて聴こえるなど、不快な音に苦しめられるのが聴覚過敏です。
これは単に『敏感』というレベルではなく、日常生活に支障をきたすほどの強い刺激です。
難聴者の場合は、内耳に問題のある人に多く見られます。

ちなみに『聴覚過敏』は、脳の音の処理上の問題なので、難聴に限らず、発達障害やストレスなどによっても引き起こされ、原因は様々です。
症状(感じ方)も人によって異なり、音が脳に刺さるように響く人もいれば、耳が痛い、頭痛やイライラといった形で出る人もいます。
過敏症状が出る音も 人によって異なります。

原因はいろいろありますが、難聴(特に内耳の障害による感音難聴)の場合の聴覚過敏は、一般的な聴覚過敏とは、少し仕組みが異なります
一般的なケースは、脳が音の信号を処理する際に、不要な音を抑える機能がうまく働かなくなることで起こります。
一方、感音難聴の場合は『補充現象』という、内耳の細胞のダメージによって音の大きさの感じ方が急激に変化する現象が関わっています。

以下は、耳の機能の問題(難聴)による聴覚過敏に絞って説明します。

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■難聴なのに、なぜ音を煩く感じるの?

聴こえないのに、音が煩いというのは矛盾しているように感じますが、メカニズムを知れば決して不思議なことではありません。
難聴による聴覚過敏には、耳側の問題と、脳側の問題の2つのメカニズムが関わっています

【耳側のメカニズム】
感音難聴者が『音を煩く感じる』原因の1つに『補充現象』(recruitment phenomenon)があります。
簡単にいうと、小さい音は聴こえないのに、ある音量を超えた途端に通常より大きな不快音に感じてしまう現象で、音が快適に聴こえる範囲(ダイナミックレンジ)が極端に狭くなっている状態です。

そのメカニズムを簡単に説明します。
内耳の蝸牛には、外有毛細胞と内有毛細胞という2種類の細胞があり、音の振動を受けて、それぞれ反応しています。
この2種類の細胞の役割は異なり、外有毛細胞は 微弱な音は増幅し 大き過ぎる音は抑制するなど 音の感覚を段階的に調整しています。一方、内有毛細胞は音の振動を電気信号に変換して脳に届ける役割を果たしています。
健康な耳では、この2種類の細胞の連携によって、小さな音から大きな音まで幅広くなめらかに処理しています。
※有毛細胞について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
 → 耳の有毛細胞の姿と働き

感音難聴では、先に外有毛細胞がダメージを受けることが多く、音の調整機能が失われます
すると小さな音は増幅されないため聴こえません。大きな音は、外有毛細胞が担っている音の増幅の微調整がなされないため、内有毛細胞に未処理の強い刺激が入ります。
その結果、ある音量から「急にスイッチが入ったように」音が大きく響いてしまうのです。
このダイナミックレンジが縮小し、音の大きさの感じ方が急激に変化する現象が『補充現象』です。
ボリュームのつまみで例えると、ある地点まで回しても無音のままなのに、その地点を超えた途端、いきなり割れるほどの爆音になるイメージです。

【脳側のメカニズム】
耳からの信号が減ると、脳は『信号が足りない』と感じて自動的に感度を上げます
これは耳鳴りのメカニズムと同じです。

『耳鳴り』では、音がないのに脳の感度が上がりすぎて、脳が作り出している雑音を音として認識してしまいます。(脳が「もっと聴こう」と頑張りすぎた結果、鳴り出すのが『耳鳴り』)
『聴覚過敏』では、 脳の感度が上がっている状態のところに、外から音が入ってくることで、本来は不快ではない音までもが過剰に増幅され、煩く感じてしまいます。(外からの音を拾いすぎてしまうのが『聴覚過敏』)

難聴による聴覚過敏は、耳側の問題と、脳側の問題が合わさって、『小さい音は聞こえないのに、普通の音や大きな音は耐えられないほど不快に感じる』といった一見矛盾したような状態が起きるのです。

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■聴覚過敏は難聴が進むほどひどくなりますか?

必ずしもそうとは言えません。
難聴の種類や進行のしかたによって違います。

内耳や神経の損傷によって起こる感音難聴の場合、難聴が進むにつれて脳の過剰代償が強まり、聴覚過敏が悪化するケースがあります。
一方で、難聴が極度に進行した場合、脳が新しい状態に完全に適応して、聴覚過敏が落ち着くこともあります。
また、メニエール病のように難聴が変動する疾患では、聴覚過敏の程度も日によって変わることが多く、症状の予測が難しいケースもあります。

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■先天性の難聴者でも聴覚過敏は起きますか?

起きることはありますが、後天性難聴者とはメカニズムが異なります。

現在、以下のような仮説があります。
後天性難聴の場合、聴覚過敏は”正常だった抑制システムが崩れた”ことによって起きます。
一方、先天性難聴の場合は ”音を経験して発達するはずだった抑制システムが十分に育たなかった”ことが原因で起こると考えられています。
分かりやすく説明すると、生まれつき音がほとんど入ってこない環境では、本来音の経験を通じて育つはずだった 「音を抑える仕組み」が十分に発達しないままになることがあります。
そのため、残存聴力に入ってくるわずかな音や、補聴器や人工内耳で初めて音が入ってきた時に、脳がそれを適切に処理できず、過剰に反応してしまうことがあります。

どちらも結果として脳の過興奮により起きますが、「失った」のか「育たなかった」のかという出発点に違いがあると考えられています。

『聴覚過敏』については以上です。
次回は『音の歪み』です。

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1回目『耳鳴り』→ 難聴の不快症状【①耳鳴り】のメカニズム

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