ナンチョーな私の気まぐれ日記(24)聞き取れないってどんな感じ?

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ナンチョーな私の気まぐれ日記

難聴と聞くと単純に音が小さい状態を想像するけれど、それだけではありません。
多くの難聴者が苦労しているのは言葉が聞き取れなくなることです。
音が小さくても、音がクリアならここまで苦労はしません。
音が不鮮明だから苦労しています。
この聴こえの不便さは、難聴になるまで私も分からなかったし、難聴発症当時こんな地獄が待っているとは想像もしていませんでした。

今回は言葉の聞き取りの低下について、語音明瞭度の検査でどんなふうに変化を感じてきたのかを語りたいと思います。
難聴は単純に音が聴こえないだけだと思っている人がいるならば、ぜひ語音明瞭度のことを知ってほしいと思います。

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■語音明瞭度を測る検査

自分の話をする前に、語音明瞭度を測る検査を知らない人も多いと思うので、聴力検査について少しだけ説明します。
一般に聴力検査と聞くと、ピーという音が聴こえたらボタンを押す検査が頭に浮かぶ人が多いと思いますが、これは「純音聴力検査」といって最も一般的な検査です。
音が聴こえているかどうかはこの検査で分かりますが、音が正確に聴こえているかはこの検査では分かりません。
そこで難聴だと診断されると別の検査をします。
耳の検査にはいろいろありますが、ここでは検査の種類や詳細説明はしないので、興味のある方は「聴力検査にはどのような種類があるのか?(聴力検査の種類)」を参考にしてください。

それで今回取り上げる「語音聴力検査」ですが、これは「語音明瞭度」を調べる検査です。
「語音明瞭度」とは50音の中にある発音を聴かせてどれぐらい正解したかの率です。
検査はヘッドホンから流れて来る「あ」とか「き」とかの発音をひたすら答えるだけ。
健康な耳の人なら100点満点が当たり前の簡単な検査です。
これで何が分かるのかというと、難聴の原因箇所が内耳にあるかどうかです。
内耳に障害があると、この検査の正答率は落ちます。
鼓膜などの音を伝える器官だけの問題の場合は、聞き取り能力には影響がないので、大きな音を入れれば正答できます。

この検査で出て来る最良語音明瞭度は、補聴器で改善できる聞き取りの限界の目安ともなります。
最良語音明瞭度が70%なら、補聴器で改善できるのは70%までと考えるわけです。
補聴器をしても聞き返す難聴者が多いのは、この語音明瞭度が低いからなのです。
ちなみに検査結果と実生活で比べてみると、検査で使う音が50音全てではないこともあってか、私の感覚では検査結果の数値より日常の聞き取りの方が遥かに厳しいと感じています。(前後の言葉から推測している場合を除いての話です)

ついでですが、この内耳に損傷を受けた難聴を感音難聴といい、音の伝達器官のみの難聴は伝音難聴といいます。
混合の人も多く、純粋に伝音難聴だけの人は少ないので、難聴と聞けば言葉の聞き取りが苦手と思ってもらって問題ないです。

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■軽度~中等度前半の頃の私の聴こえ

私が難聴を発症したのは20代半ばで、それまでは健康な耳でした。
だから一般の人がどれだけクリアな音を聴いているのかは知っています。
難聴発症時はとにかく耳鳴りが煩いだけの軽度難聴でした。
当時の私は難聴の知識はゼロだし、オージオグラムがどういうものかも知らなかったので、その紙のコピーくださいとも言えず、残念ながら初期の記録は残っていません。

はじめて語音明瞭度の検査を受けたのは、治せないと診断を受けた後も諦めきれず、治してくれる病院をあちこち探し回っていた時でした。
この時には中等度の前半ぐらいに低下していたかもしれません。
医師が何と言ったかは正確には覚えていませんが、これまでとは違う検査をしてくれるようだったので、どんな検査をしてくれるのかとドキドキしながら受けたら、ヘッドホンを装着して、流れてくる50音をひたすら聞き取るだけの単純な検査で拍子抜けしたのを覚えています。
拍子抜けというより、あまりに簡単過ぎて 馬鹿にされているような気持ちになったというのが正直な感想です。

私自身がそんなふうに感じていたので、医師が大丈夫そうみたいな発言をすると勝手に100%正答したと思い込んでいました。だけど、今、振り返ってみると100%ではなく 生活に支障が出るほどではないという意味の大丈夫だった可能性もあるかもと思います。

というのも、その頃すでに電話などの番号アナウンスで0と9を聞き間違うことが多発していました。
その頃の私の聞き間違いは不鮮明なのではなく、はっきり違って聴こえる感じだったので、自信があっても間違っていた可能性はあります。

この難聴初期の音の聴こえ方は、音質にあまり変化がなく、クリアな聴こえの中にほんの少し狂いが生じているみたいな感じで、本人には自覚のない聞き間違いが発生していました。
変な言い方ですが、“自信を持って聞き間違えていた” という感じで、自分にははっきりこう聴こえるのに、他人には違って聴こえる事を知った時にはたいへんなショックで、一気に自分の耳は信用できないと自信を無くしてしまいました

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■中等度半ばを超えた頃から

正確にはいつからこうなったというのは、記録をつけていないので、あくまでこれぐらいの聴こえの時だったという記憶で語りますが、難聴の進行とともにどんどん音が壊れはじめました
言い方を変えると、音質がみるみる劣化したのです。
壊れはじめると、苦手な音が出てきました。
最初は特定の音が人より大きく感じられる程度の症状でしたが、それが割れるような音に変化し始めたのは、50dBを超えた辺りからだったように思います。
最初は頭に響く程度だったのが、その内に脳にナイフがグサッと刺さるほどの苦痛を伴う音へと変化しました。
聴覚過敏というと 音に敏感過ぎるというだけのように思いますが、私の場合は敏感という感じではありません。音が耳や脳に暴力を振るってくる感じです。
これを「うるさい」と表現すると音が大きいと連想しがちですが、音が大きいなんて生やさしいものではなく、私は痛みに近い衝撃を感じていました。

この頃になると、語音明瞭度の検査で流れる50音の中に、完全に壊れて判別不明の音が混じるようになっていました。
もしかすると、その音には過敏症状を起こしている周波数の音が混じっていたのかもしれませんが、それは確かめたことがないので分かりません。
とにかく50音の発音に存在しない不快な雑音が難聴の進行とともに増えて行くのです。
その頃の正答率が何%だったかは覚えていませんが、両耳とも70%を割っていたのは確かです。
当時はまだクリアだと感じる音は残っていましたが、自分が認識した音が正解だったかどうかは私には分かりません。

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■更に聴力が落ちて

中等度の後半、60dBを超えた頃には、私の場合はクリアに聴こえる音は完全に消失していたと思います。
テレビから流れるナレーションの声は男性と女性の判別がつかなくて、低音の男性の声なのに、女性が喋っていると感じるみたいなことが増えました。
少し音源と離れただけで、全ての声がロボットや宇宙人のような声に変化するので、近くで話をしていても個人の声の特定は全く出来ません
音の方向も掴めないので、会議などで突然誰かが話始めても、口が動いているかを目で確認しない限り、誰が話しているのかは分かりません。

この頃になると、語音明瞭度の検査で流れてくる全ての発音に「これは『に』かな?」というふうに疑問符が付くようになりました。
確信のある音は皆無で、何となくでもそう聴こえるならそれを答えておけという感じで、全ての回答が勘です。この頃の正答率は50%有るか無いかまで落ちていました。

因みに60dB台の時に、久々にクリニックで語音明瞭度の検査を受けたのですが、そこでの検査結果は検査した人のミスで不明な結果となってしまいましたが、結果以前に検査自体が自分には非常に難しいと感じました。
どういうふうに難しいと感じたかというと、周波数を変えて聞き取り検査が始まるたびに、ヘッドホンから自動的に説明が流れてくるのですが、その説明を私は聞き取ることができなかったのです。
集中して耳を傾けていると、最後に「数字で答えてください」と聴こえる時があって、その1列は全問数字で答えました。
後で聞くと数字は一切なく、全て50音とのこと。
数字が流れていると思い込んでいる私は、流れている音が50音の発音なのに、そのことに全く気付かず数字で答え続けたのでした。

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■どんなふうに不鮮明なのか?

私の場合、どの音もクリアではなく、ほとんどの音が似た音に聴こえます

あくまで私のケースですが、どんなふうかというと、明らかに違うと感じるカテゴリーが数種類あって、語音明瞭度の検査の場合だとそのカテゴリーは3種類ぐらいだと思います
検査では「に」と聴こえることが多いのですが、さっきも「に」で、次も「に」と聴こえて、こんなに続くわけがないと自分の耳を疑います。
よく聴くと「に」に聴こえるけれど、さっきの「に」とは少し違うと感じたりするので、たぶん違う音なのだろうと懸命に頭を働かせるわけです。
ところが、そもそもどちらが正しい「に」なのか分からないし、どちらも「に」ではないかもしれません。
考える時間はほとんどないので、微妙にさっきと違うと思っても「に」以外の文字が浮かばず、結局「に」と答えてしまいます。
しばらくすると、さっき迷ったのと同じような音が聴こえます。
さっきから考えているのでこれかな?と、今度は「じ」と答えたりします。
聴こえているというより、ただの思いつきです。

ちなみに、今の私の耳に聴こえる音は全て濁ったような不鮮明な音です
たぶん検査の中には「い」もあると思うのですが、最後に受けた検査を思い出してみて「い」と答えた記憶はありません。
聴こえる音が濁っているから濁りのない「い」は浮かばないのだと思います。

私の場合は「あ」「え」「お」もあまり区別はついていません。
母音の区別がついていないので、当然子音もよく分かりません。
よく「さかな」を「たかな」と間違うとかの説明を聞きますが、私の場合は同じ母音で間違うというより、全然母音が違ってもしっかり間違えます。

これは周波数による聴こえの差が大き過ぎることが起因しているのではないかと自分では思っていますが、本当のところは分かりません。
一般によく使う語音明瞭度の検査では、検査で使っている発音が50音より遥かに少ないので、私の場合は毎回頑張っても10種類程度の発音しか口にしていませんが、20~30%の正答率は出せています。
但し、どの音もはっきり聴こえているわけではなく、全部不鮮明な音を勘で答えているだけなので、こんなのを正答率と言ってしまっていいのかなとの疑問は持っています。

とにもかくにも私の場合は耳で聴いているのではないことは確かです。
なにせ、50音を何の疑いもなく数字で答えてしまえる、すなわち 自分が想定した通りに聴こえてしまう耳なのですから。
「想像通りに聴こえる」=「何も聴いていない」ということですから、恐ろしいことです。
この適当な状態に最近は慣れてしまっていて、そんな自分はもっと恐ろしいです。

難聴者の耳は本当に不正確です。
なので、身近に難聴者がいる人は、大事なことは文章やメールで伝えてください
本人の「聴こえた」とか「分かった」は当てになりません。
しっかり聴いたつもりなのに、全く違っていたということは、私だけの話ではないと思います。
なので、難聴と聞いたなら、どうかご配慮お願いします。

今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。
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[前回のナンチョー日記]
  ↓
ナンチョーな私の気まぐれ日記(23)障害児教育について思うこと

[次回のナンチョー日記]
  ↓
ナンチョーな私の気まぐれ日記(25)難聴の初期症状(私の場合)

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