デシベル(dB)の差による聴こえの違いと難聴の種類について

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聴覚障害

【耳 No.2】

耳が聞こえるしくみと難聴の種類の記事の中でも少し触れましたが、難聴は耳のどの器官が損傷したかによって「伝音難聴」「感音難聴」「混合難聴」に分かれます。
ここではもう少し「難聴の種類」について詳しく説明したいと思います。
その前に、一般に「難聴」とされる聴力レベルがどれぐらいのものなのかについて説明します。

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■デシベル(dB)とは何か?

聴覚障害者と話をしていると、「私の聴こえは50デシベルです」とデシベル(dB)で説明したり、「軽度難聴です」と軽度・中等度・高度・重度の名称で説明されることがあります。
デシベル(dB)とは音の大きさを表しているのですが、例えば 50dBがいったいどれぐらいの聴こえなのか、高度難聴がどれだけの聴こえなのか、当事者でなければさっぱり見当が付きません。

このデシベル(dB)は 聴力検査で測ります。簡易な検査は健康診断でも実施されているので、”ヘッドホンを耳に装着して、ピーと鳴ったらボタンを押す” という検査を 皆さんも一度は経験されたことがあるのではないでしょうか。
この検査は、いくつかの周波数(音の高さ)について、その音がどの程度の大きさなら聴こえるかを測っています。
20dBの大きさでボタンを押したならば 20dB。
50dBの大きさまで音量を上げてようやく聴こえたならば 50dB。
測定可能な最大の音量でも聴こえなかった場合は、スケールアウトと表現されます。
耳鼻科で使用している測定器の最大音が聴こえないというのは ほぼ失聴している状態です。
この測定器(オージオメーター)や、その結果を記したオージオグラムの見方については、また別記事で改めて説明したいと思います。
※オージオグラムで使用している周波数やデシベルの平均値の出し方などについては、漫画「淋しいのはアンタだけじゃない(第1巻)」を読んで思ったことの記事の中でも簡単に説明しているのでそちらも参考にしてください。

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■デシベル(dB)と、音の大きさの目安

0dBとは人間が聴く事のできる最も小さな音です。
若くて健康な人は、どの高さの音も0dBに近いです。
耳が良い人の中には0dB未満の音が聴こえる人もいます。
一般に25dB未満は正常範囲とされています。
人の呼吸音や、時計の秒針の音が聞こえるならば正常なレベルです。
と、こういう説明の仕方では分かりにくいですよね。
なので、各デシベルの音の大きさを想像しやすいように、身の回りの音を参考に挙げましたので下の表を参考にしてください。ちなみに音量は音源との距離も影響するので、あくまで参考程度で見てください。


(表:デシベル別 音の事例)

さて、聴こえのレベルについて細かく説明する前に、デシベル(dB)の数値がどういうものなのかを少し説明させてください。
単純に数値が並んでいると20dBと30dBの差も、40dBと50dBの差も同じように思ってしまいますが、デシベル(dB)は絶対値ではなく倍率なので同じではありません。倍率を扱いやすい数値にしたのがデシベルで、このデシベルを倍率で見たならば、下記表のようにデシベルの差が開くほど数値がどんどん大きくなります


(表:デシベルの倍率表)

例えば、基準となっている0dB(0と表現しますが音はあります。人が聴こえる一番小さな音が0dBです)と、身体障害者手帳がもらえる70dB以上の聴こえでは最低70dBの差がありますが、この70dBの差を倍率で見ると3,162倍です。これはどういうことかと言うと、0dBの音が聴こえる人が聞いている音と同じ音を同じ音量で聴こうと思ったならば3,162倍もの音を入れなければ同じにはならないということです。倍率が高過ぎて想像がつきにくいと思いますが、補聴器でカバーできる音量を遥かに超えて聴こえていないということは想像してもらえるのではないでしょうか。

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■難聴の程度の種類

【軽度難聴】

軽度難聴は、25~40dB未満の聴力レベルです。
健康な耳の人(0dBを基準に計算)とは25~39dBの差があるので、もし同じ音量で聞こうと思うならば18倍~89倍の音を入れる必要があります。
軽度で補聴器をする人は少ないです。
音楽家や調律師など音を聴く能力を必要とする人は別として、一般に軽度難聴で困り始めるのは人との会話です。後で説明しますが、難聴者の多くは音が歪んで聞こえる感音性の難聴なので、言葉が聞き取りにくくなり、聞き返すことが増えます。

【中等度(中度)難聴】

中等度難聴は、40~70dB未満の聴力レベルです。
健康な耳の人(0dBを基準に計算)と同じ音量で聞こうと思えば 40dBで100倍60dBで1,000倍70dB近くなると3,000倍近くの音が必要になるので、中等度になると補聴器を装着する人が一気に増えます。
通常の会話60dBとされるので、60dBまで低下すると かなり日常生活に支障をきたします。
特に感音難聴は、音を補聴器で増幅しても、聴こえる音が壊れているため、聴力の低下とともに 言葉の聞き取りは ますます悪くなり、筆談が必要な人も増えます。しかし、そこまで悪くても、福祉的には健聴者扱いなので、要約筆記などの情報保障を受けることはできません。
※情報保障とは、身体的ハンディキャップにより情報を得ることができない人に対し、代替手段を用いて情報を提供すること。

【高度難聴】

高度難聴は、70~90dB未満の聴力レベルです。
健康な耳の人(0dBを基準に計算)と同じ音量で聞こうと思えば 3,100倍以上の音が必要です。
このレベルになると、補聴器無しで生活するのは困難です。
70dB大きな声セミの鳴き声レベルですので、それが聴こえないとなるとどれだけ悪いのか想像できると思います。
70dB以上は 身体障害者手帳の認定を受けることが可能です。障害者の認定を受けると、重要な生活場面で要約筆記や手話通訳などの情報保障(聴こえの援助)を受けることができます。また障害者雇用の該当にもなるので、社会的な不安はかなり軽減されます。
[ちょっと余談]
進行性の難聴の私の体験談を少し話させていただきますと、正常→軽度→中等度→高度までの各レベルの聴力を体験してみて一番辛かった時期は高度難聴の今ではなく、中等度難聴の後期でした。特に片耳が70dBを超えているのに、もう片方が68~69dBとギリギリ70dBに届かないために 障害認定を受けれなかった頃が一番精神的にも苦しかったです。
もちろん日常生活面は高度難聴の今の方が不便です。だけど社会で働く人間にとっては、やはり仕事の問題が大きいです。元々健聴だったので 悪化していく どの段階もその時は一番辛いと感じていたのですが、振り返ると 50dB台までは心身とも神経をすり減らしながらも健聴時代の仕事の延長線上で何とか頑張ることができました。ところが、60dBを超えると人との対話や連絡事項でミスを多発するようになり、同じ仕事を続けることが明らかに無理な状態になりました。障害者になったのだなあと自覚したのが60dB台の時だったのですが、60dB台は社会的には健常者です。出来ないけれど出来ないと言えば切り捨てられてしまうので、精神的にも追い詰められました。私と同様に追い詰められる人は少なくないのですが、どうしてそこまで追い詰められるのかというと、社会は聴力があって当たり前です。どんな仕事も基本的に聴力が必要です。もしも聴力を失ったことが原因で 今までの職を追われることになったのだとしたら、次はもっと耳を使わない仕事を探さねばなりません。それは今までとは違う職種、すなわち初心者として就活することになります。世の中に耳が聴こえなくても影響の無い仕事はありませんから、健常者と同じスタート地点に立って就活したならば勝てる見込みは極めて低いのです。聴覚障害者で最も路頭に迷う可能性が高いのが、70dBにギリギリ届かない人達なのです。
当時はあまりに不安で、いっそ失聴した方が楽なのではないかと思うほど精神的には追い詰められました。その経験からも、身体障害者手帳の対象は60dB以上に引き下げるべきだと私は思っています。個人差があることを考慮して 少し厳しめにしたとしても、65dB以上は手帳の対象にするべきだと強く思います。
因みに、健康な0dBの聴こえの人と、55dBの人の聴こえの差を倍率で見ると 562倍です。60dBだと1,000倍、65dBだと1,778倍の差になり、70dBだと3,162倍になります。たった5dBの差でこれだけ倍率が違ってきます。
正常な聴力の人が感じる1dBの差と、難聴者が感じる1dBの差は体感的にも違います。難聴者の場合、たった数dBの悪化で出来ないことがてきめんに増えて行くのです。

【重度難聴】

重度難聴は、90dB以上の聴力レベルです。
健康な耳の人(0dBを基準に計算)との倍率差は 90dBで31,623倍100dBともなれば一気に10万倍です。
重度難聴は、失聴もしくは殆ど失聴に近いレベルなので、補聴器を外せば殆ど無音です。
90dBは「怒鳴り声」、100dBは「電車が通る時のガード下」、これが聴こえないのですから、日常の生活音は当然に聴こえません。
100dB以上は、身体障害者手帳で最も重い等級(2級)に該当します。(聴覚障害に1級は無い)
100dBと完全失聴とは違うと思うのですが、福祉的には100dB以上は全て同じ等級(2級)です。実際のところ、どの程度の体感差があるのかは私も体験したことがないので よく分かりません。
だけど1つだけ言えるのは、重度難聴の人と話をしていると、デシベルに関係なく、補聴器が役に立っているようには見えないということです。声で呼んでも聴こえませんし、会話も 聴こえているように見えても 必死に口の動きを読んでいるだけです。
私の知人で 障害手帳2級で補聴器を付けている人がいるのですが、その人は補聴器を外すと完全に無音。補聴器を付けても近くに落ちた雷鳴がかすかに聞こえる程度だと言っていました。それでも補聴器を付けている理由は、耳が悪いことを分かってもらうためだそうです。それと音が全く無いよりは、例え僅かでも聴こえた方がいいとも言っていました。
90dB台(障害手帳3級)の友人達も、補聴器を取れば無音だと言います。補聴器を付けている真隣から呼び掛けても反応がないので、気付いてもらうために、体に触れたり、手を振ったり、注意を促す必要があります。
中には本当に聴こえていなくて、なぜこの人が2級ではないのだろうと思うこともあります。
聴覚障害は最初の認定基準も厳しいですが、障害認定を受けた後の等級の分け方も聴覚障害を持つ者から見ると大雑把だなあと感じます。そう感じるのは音声会話の不自由さを殆ど考慮していないからだと思います。

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■身体障害者手帳の等級

身体障害者手帳の話が出たので、聴覚障害者の各等級の身体的条件についても触れておきます。
身体障害者手帳の等級は障害によって1~7級までありますが、聴覚障害は2~6級までしかなく、また5級もありません。2級、3級、4級、6級の4つしかないのです。
たまに聴覚障害者の方で1級を持っておられる人がいますが、これは聴覚障害2級のほかに別の障害を持っているからで、聴覚障害単独での1級はありません。聴覚障害者で1級を持っておられる人に多いのは、聴覚障害2級と言語機能障害3級(言語機能障害には3級と4級しかない)との組み合わせです。
余談ですが、身体障害者手帳のことをあまり知らなかった時、私は完全失聴したら1級だと思っていました。
そして私個人の感覚でいうと、5級は本来あるべきで、60dB台も障害者に加えて 60dBを6級、70dB台は5級へと変更した方が個人的には納得します。何より 今の基準は音量重視で 聴こえる音が壊れていることへの配慮がなされていないことや、また認定基準に使う聴こえの平均値の出し方にも疑問を持っているので、とにもかくにも困っている人が救われるように定義の見直しをして欲しいと思っています。


(表:聴覚障害程度等級表)

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■損傷部位による難聴の種類


(図:耳の構造)

音が聞こえるしくみについては、耳が聞こえるしくみと難聴の種類の記事で説明した通りですが、ここでは病院で診断名称にも使われている障害部位別の難聴分類、「伝音難聴」「感音難聴」「混合難聴」について詳しく見ていきたいと思います。ちなみに 難聴者の多くは「感音難聴」です。

【伝音難聴(伝音性難聴)】

「伝音難聴」とは、外耳や中耳など音を伝達する部位(伝音機構)に問題が生じて起こる難聴のことです。
伝音難聴の場合、音の感覚機構そのものに障害はないので、音の歪みは生じません
耳に入る音を大きくすることができれば 聴こえ自体はシャープなので、損傷部位の手術や補聴器の装用などにより 聴こえを取り戻すことができるケースが多いです。
伝音難聴を引き起こす病気には、耳垢栓塞(ジコウセンソク)、外耳道閉鎖症(ガイジドウヘイサショウ)、外耳道炎、耳管狭窄症(ジカンキョウサクショウ)、中耳炎、鼓膜裂傷、耳硬化症、腫瘍等があります。

【感音難聴(感音性難聴)】

感音難聴は、感覚機構の障害なので、伝音機構の障害とは違って、聴こえる音に歪みが生じます。障害部位は内耳から聴神経で、内耳の問題か聴神経の問題かで、内耳性(迷路性)後迷路性難聴に分けられ、多くは内耳性です。
この内耳性の感音難聴は、蝸牛にある感覚細胞(有毛細胞)の欠損や損傷が原因で起こることが多く、感音難聴の聴こえの状態は、軽度~中等度~高度~重度まで様々です。
内耳は、蝸牛と半規管が隣接しているため、難聴とともにめまいを訴えることもあります。
蝸牛の障害は、発症時期によって「先天性異常」と「後天性難聴」に分けられ、先天性異常は、遺伝性、妊娠中の原因、出産時の原因に分類されます。
後天性難聴を引き起こす病気には、炎症(漿液性、化膿性、ウイルス性等)、音響性、頭部外傷、側頭骨折、聴器毒性薬物中毒、メニエール病、突発性難聴、老人性難聴、循環障害、新陳代謝障害、腫瘍などがありますが、最も多いのは原因不明です。

感音難聴の特徴は、感覚機構が傷害を受けるため、音が歪んで聞き取りが困難になることです。また小さな音が聴こえない反面、大きな音が苦手(不快)です。少しの音の変化でキンキン響くので、補聴器の調整も難しいです。この他、耳鳴りを伴うことが多いのも特徴です。

感音難聴には高音型や低音型など聴こえ方は 人によってさまざまです。この違いがどうして生じるのかは、蝸牛の有毛細胞のどこが損傷を受けたかで変わってきます。
別記事の耳が聞こえるしくみと難聴の種類でも説明しましたが、再度説明すると、蝸牛(カタツムリの形状に似ている器官)の内部はリンパ液で満たされていて、音の振動がリンパを介して蝸牛管内部を進むしくみになっています。
この蝸牛の内部には特殊な細胞(有毛細胞)が並んでおり、これらは配置場所によって担当している音の高さが違います入り口に近いほど高く、奥に行くほど低くなります。音(振動によるリンパ液の揺れ)が蝸牛管のどこまで進むかは、音の高さ(周波数)によって異なり、音が低いほど奥の方まで届くようになっています。

感音難聴は症状が固定してしまうとまず治りません。
なので、聴こえのカバーには補聴器を利用することが多いです。
最近では高度から重度の場合、人工内耳による治療も増えています。

また感音難聴には、先にお話した通り、内耳性難聴だけでなく、後迷路性難聴もあります。
ちなみに迷路性の名称の意味ですが、これは内耳の中は構造が複雑なため、内耳のことを「迷路」と呼ぶことに由来します。後迷路性難聴とは、内耳より後ろの部分を損傷しているのでこの名称が使われます。
部位的には、内耳で電気信号に変えられた信号を脳に伝える「聴神経」の問題なので「神経性難聴」と呼ばれることもあります。
後迷路性難聴は、聴神経の欠損や損傷が原因で引き起こされているため、音は聴こえるけれど言葉を聞き取れないなどの症状が出ます。

【混合難聴】

混合難聴とは、伝音難聴と感音難聴の2つが混ざった難聴のことで、内耳と外耳の傷害、または内耳と中耳の傷害が原因の難聴です。例えば、中耳炎が悪化して内耳にまで及んでしまったケースなどが該当します。

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感音難聴は単純に音が聴こえないだけでなく、聴こえている音が歪んでいるので、軽度難聴でも苦労している人はいます。
歪むという表現は健聴者には分かりにくいかもしれませんので 言い換えますと、壊れた音を聞いているので解読不能な言葉があるということです。そして、聴力低下が進むにつれて音はもっと不鮮明になり、解読不能な言葉が増えていくのです。
コミュニケーションは人間が人間らしく生きるために無くてはならない重要な要素です。
身体障害者認定を受けているからフォローが必要などと線を引けるものではありません。
世の中が聴こえなくても不便が無いように、もっと工夫と配慮のある世界に発展すればいいなと心から思います。

次回は、聴力検査の種類について説明します。
「聴力検査にはどのような種類があるのか?(聴力検査の種類)」

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